今日は、石倉先生の囲碁教室の日でした。復習もろくにできていないうちに1週間経ち、ヒヤヒヤ、でもワクワクしながら行ってきました。まだ、おぼろげになんとなくわかるような気がする、という微妙なところですが、いつもお会いする初心者の方たちと慣れてきて話が弾むので、それも楽しみです。

ところが帰宅して、私を見てコウジさんが発した一言に驚きました。
コウジさんは、「早く教えてよ~。今日はどんな歌習ってきたの?」と言ったのです。

歌?なにそれ? ガ~ン・・・ またですかい。また勘違い、記憶違いですかい。

私が、「歌に行ってきたと思ってるの?」と聞きますと、
コウジ「うん。・・・あれ?違ったっけ。 ああ、俳句だ!」
私「俳句なんてやらないよ。さあ、私はどこへ行ってきたでしょう?」

・・・ 30分後くらいでしょうか、もう私はすっかりその件は忘れていたのに、いきなりコウジさんは「あ!思い出した!囲碁だ!」と叫びました。 ずっと考えていたのかな?

もうすぐ高次脳機能障害になって14年になりますが、この記憶障害のほかには、感情失禁ですぐ怒ったり泣いたり、という症状が健在です。

先日、世田谷高次脳機能障害連絡協議会の総会があり、コウジさんは司会を頼まれました。台本は用意して下さったのでコウジさんはそれを読むだけですが、結構そつなくこなせたので感心しました。その姿を見ていると、大学時代にゴルフ同好会の部長だったコウジさんが、部会になると前で話していた、ちょっとカッコイイ姿を思い出しました。あの時と同じ、ソフトでいい司会でした。

けれど、ほかの当事者の男性が話していて、突然自分の話の何かが引き金になり大泣きし始めた時、まさか、と思ってコウジさんを見ると、やっぱり彼もつられて大泣きしていました。なぜか、テレビでも泣いている人を見ると、内容はわからなくても、すぐコウジさんはつられて泣きます。今回も、その当事者の方の話はわかっていないのに、泣いているコウジさん。ほかの参加者は、2人の大泣きする成人男性を交互に見ては、思わず笑い出しました。するとその男性も、コウジさんも、今度は笑い出し、結局皆で大笑いして楽しかった、という一幕がありました。

その日の会では、コウジさんを含めた当事者の方たちが、自分の意見をはっきり言えたことも新鮮な驚きでした。もうこの会のメンバーの方たちにコウジさんも慣れ、リラックスして安心して話せているのでしょう。そういう姿を目の当たりにしますと、やっぱり当事者の方たちには、楽しい居場所があるのが一番だなあ、と思った次第です。

・・・ さて、昨日の話の続きですが、村上深さん。囲碁に疎いはずの私ですが、この方のお名前はなぜか存じていました。囲碁が強い方だよね、と。でもプロだとかアマだとか、本因坊だとかまでは理解していませんでした。村上さんは、元アマ本因坊だそうです。お若いうちにアマ本因坊になられたあと、プロは諦め、アマでご活躍されている方なのだそうです。

その方が、大船渡での3日間はもちろん、事前からスケジュールや出席者リストなど、丁寧に作成しては配布されていましたので、(なぜ?なぜ有名な村上さんが、こんな裏方の大変な作業をされているのだ?手が足りないなら、下っ端の私がやるべきでは?← パソコンは苦手なので、できないけれど。)と不思議でした。今でも理由はよくわかりませんが、きっとこのような作業が得意で、任されていらっしゃるのだとしか考えられません。
とにかく大船渡でも司会をされたり、ブラインド碁を打たれたり大忙しの村上さん。私は遠くから見ているだけでしたが、事前の大勢のやりとりの中で、村上さんが「囲碁療法」というものをされているということは知っていて、実はとてもとても気になっていたのです。それでもそれについてお話する機会もなく、帰りの新幹線に乗って、あとは東京まで座っているだけでした。

ところが席に座ってみると、私の前に村上さんが座られているのに気づきました。おお、これはまたとないチャンス!
思わず背後から、「あの~、囲碁療法なんですが・・・」と話しかけますと、驚いてくるっと振り返った村上さん。気さくに話に応じてくれました。すると村上さんの隣に座られていた方が、私と席を替わって下さったので(優しい!)、それから東京に着くまでずっと話をすることができたのです。

村上さんは、現在東京都健康長寿医療センター研究所の研究チームに所属されていて、高齢者向けの囲碁入門プログラムを多く提供されてきているそうです。 提供場所は、認知症カフェや特別養護老人ホーム等で、主に高齢の方々の脳機能が低下しないよう、活性化するよう、囲碁(療法)を教えられているそうなんです。

思わず私は、「それは、高次脳機能障害にもいいのでは?」と聞きました。 つづく