日々コウジ中

日々コウジ中 - クモ膜下出血により、さまざまな脳の機能不全を抱える“高次脳機能障害”になったコウジさんを支える家族の泣き笑いの日々

2018年02月

続きです。

第三部がトーク「障害者と囲碁」で、パネリストは中川剛志さん、東海林周子さん(晴也さんのお母様)、柿島光晴さん、私、浅野史郎さん、北川正恭さんの6人で、木谷正道さんが司会されました。

柿島さんは、全盲の視覚障害者でアマチュア4段。囲碁は目が見えなくなられてから、アニメ「ヒカルの碁」を聴いて囲碁に興味を持ち、始めたそうです。

中川さんは支援学校の先生でアマチュア8段。晴也さんの囲碁習得を、最新技術面から支えています。

周子さんは全身性障害者の晴也さんのお母様で、晴也さんが囲碁を学ばれる手伝いをされているところです。

私はこのブログでいつも書いているように、夫コウジさんの障害症状改善を期待して、囲碁を始めて1年。地元の囲碁教室へも10か月通っているものの、なぜか実力がついてこなくて苦戦しています(笑)。かえって同じく囲碁初心者の夫の方が、囲碁教室へ行っていないのにセンスがあるように思えます。

浅野史郎さんは、元宮城県知事で現在神奈川大学教授。テレビでもよく拝見していた方なので、ご本人を前にしてドキドキしました。でもとても気さくで面白い方なので、びっくり。囲碁はやられないそうで、壇上で「これからも全くやるつもりはない。」ときっぱり言われるので、観客も私もおかしくて吹き出しました。

北川正恭さんは、元三重県知事で現在は早稲田大学名誉教授。「政策評価システム、情報公開、マニフェストなどを推進し、地方分権の旗手として名高く、D.オズボーン著『行政革命』という本を日本に初めて紹介、実践された」そうです。囲碁はお強いそうです。(ちなみに夫コウジさんは、チラシの北川さんのお写真に、「知ってる知ってる!」とすごく反応していました。)

いつも中川さんや晴也さんや周子さん、柿島さんとはお会いしていますが、浅野さんと北川さんという超有名な政治家であり教授である方々が、今回のイベントで私達障害当事者や家族、支援者と一緒にご登壇されるのは異色な企画だなあ、と内心思っていました。 けれど企画されたのが木谷さんですから、何でもありだとも思っていました。

時間が1時間10分ありましたが、皆さん沢山話されますので、なんと各々1回ずつ話して時間となり、2回話せませんでしたし、ディスカッションにもなりませんでした。・・・ でも、もしかしたら、私が一番話が長かったですか?だとしたら、すみませんでした~!(笑)
気を取り直して、 お1人お1人の話をご紹介しますと、

中川さんは、第二部ですでに、障害者が囲碁を打つために必要な最先端ICT(情報通信技術)のご研究を、晴也さんを通してされていることを映像と共にご説明下さいました。

晴也さんのお母様は、視線入力装置によって15歳の晴也さんが生まれて初めて発した言葉が、「ありかとうちかこ」だったけれど(それも非常に感動的な話ですよね。涙が出ました。)、晴也さんは段々口が悪くなってきて、「おい、ちょっとこい」なんて言うようになった、と言われたので、会場は爆笑でした。一番最近入力された言葉は、「東海林晴也は麺たべたい」で、周子さんが早速いそいそとうどんを出したところ、「(食べたい麺は)ラーメンだった」と言われ、「それなら最初からラーメンって言ってよ、と思った」そうです。(そこでまた会場は爆笑。)視線入力は視線がなかなか安定しないので、スキャンと大きなスイッチで入力する方が楽だとのこと。

けれど、あとで浅野さんのご発言にも出てきますが、言葉をうまく発せられずとかく意思疎通ができないのでは、と思われてしまう障害者の方の内面が、実はこんなに色々な感情が豊かに溢れていて、私たちと全く、なんら変りがないということを、広く社会は知らなくてはいけない、と思いました。

柿島さんは日本中の盲学校のみならず、台湾や韓国、モンゴルなどの盲学校にも視覚障害者用の碁盤セット「アイゴ」を寄贈してその普及活動をされています。今後は中国ほかの国々の学校にも普及させたいとのことで、視覚障害者が囲碁によってより生活を楽しめたり世界を広げたり、いずれは囲碁インストラクターが鍼灸マッサージに次ぐ第4の職業となることを目指されています。

ところで私はイベントが始まる前に、柿島さんを見つけ、9路盤という小さいアイゴで対局して頂きました。小さい碁盤なので置石はなく対等に始めましたが、柿島さんの石を取ろうと焦って、自分の石がアタリになっているのに気づかない有様でした。 柿島さんに、「おや、取られてしまいますが、いいんですか?」と親切に教えて頂いて初めて、自分の石がアタリになっていたことに気づきびっくり。それまでは、(よ~し、この小さな碁盤なら柿島さんに勝てるかも!)、と身の程知らずな欲が出て鼻息荒かった私は、急に卑屈になり、「柿島さん。じゃあ、ここ逃げていいですか?」と聞きました(笑)。優しい柿島さんは、「いいですよ。」と余裕の笑顔。(よし、1つおまけしてもらったから、勝てるかも!)とまた私は鼻息荒くしたのですが、結果は見事大敗。
・・・ おかしいなあ、私の方が目が多いように思えたのですが、勝ちどころか、大差で負けたんです。

よく石倉先生が、私達生徒が、「なんとなく勝っっちゃったなあ。勝ってる気しなかったんだけど。」とか、「おかしいなあ。なんで負けなんだろう。勝ったと思ったんだけど。」と整地した後に首をかしげていると、「そこが囲碁が平和のゲームといわれるゆえんなんですよ。」と仰っていますが、まさにその通りですね。

もちろん、4段の柿島さんに勝てるわけないのですが、負けてもキツネにつままれたような気分で、悔しいというよりぼんやり不思議な気分なんです。きっともっと上達してくれば、勝って嬉しい、負けて悔しい、となるのでしょうけど、まだ初心者(いつまでも初心者の私というのも恥ずかしくなってきましたが)の私は、あくまでも「ぼんやり」した気分でした。

私がなぜこの話をしたかといいますと、柿島さんという視覚障害がおありの方の囲碁を教える対象は、なにも同じ視覚障害の方ばかりではなくとも、私のような晴眼の初心者も含めていいと思ったからです。としますと、教えられる層も広がりますよね。柿島さんにもそうお伝えしました。柿島さんも、きっととっくにその点は気づかれていらっしゃると思います。柿島さんは私よりずっと年も若いうえに(40歳です)、視覚障害までお持ちなのに、私よりずっと色々なことが見えているような気がしてなりませんし、実際そのようです。とても素敵な方です。

第三部のトークでは、柿島さんの次は私が話したのですが、私はこのブログの2月8日に書いた「高次脳機能障害へ囲碁が与える効果についての私の考察」の内容をざっくりお話しましたので、割愛します。

さらに私の次は浅野さんが、その次は北川さんがお話されましたが、この調子ではどんどん今日の分のブログが長くなっていきますので、お2人の話は、第五部の記念対談「明日の日本~まちおこし・自治体おこし」のお話の最初に書かせて頂きます。

・・・今日、柴犬のウメは11歳になりました。
人間でいえば60歳くらいでしょうか、段々年を取ってきましたが、まだまだ元気です。
今、1人(1匹)でトン、トンと階段を下りて行きました。私の布団の下3分の1くらいに乗って、先に寝ているのでしょう。私も今日は実家へ行っていたので、あさっての栃木講演の用意を今からちょっとしてから、そろそろ寝ます。ウメやハルやチーが待ってくれていると思うと、お布団に向かうのが毎晩楽しみです。

ちなみに昨晩は足元にウメ、左の脇の下にハルとチーの猫2匹が入っていたので、すごく寝苦しかったのですけれど、幸せで安眠できました。この3匹がいてくれて、とても心安らぎます。有難う。

ではまた明日。

昨日は静岡市民文化会館の大会議室において、標記のイベントがありました。

打ち合わせもないまま、一抹の不安を抱きながらの参加でしたが、これがもうとても楽しく、中身の濃いイベントとなりました。あまり市内にこのイベントの宣伝が行き渡っていなかったのか、来られた方はそんなに多くはありませんでしたので、それがとても残念。こんな面白いイベント、そうそうなかったと思います。

会場に入ったところでまず、イベントの第一部として、全盲の棋士柿島光晴さんが、北川正恭さんと対局されています。その隣では、全身性障害者の東海林晴也さんが、中川剛志さんと対局されています。

柿島さんはアマチュア4段。昨年青年会議所主催人間力大賞で、準グランプリを受賞されました。
北川さんは前三重県知事で早稲田大学名誉教授で、アマチュア初段か4段か6段か、そこが定かではありませんが、お強いようです。
晴也さんは15歳で、囲碁は始めたばかり。碁石を持ったお母様の手首を持って、自分の打ちたいところへ誘導して打ちます。最近は視線入力装置を使って碁石を置く訓練をしていますが、視線を安定させるのに少々苦労されているとのこと。
その晴也さんに最先端ICT(情報通信技術)を使いながら囲碁を打つお手伝いをされているのが、特別支援学校教諭の、中川さんです。

その4人が対局している様子を、周りを取り囲んだ地元の大人の方たちはもちろんのこと、子どもたちも真剣な眼差しで見つめていました。障害があっても、こうして囲碁ができるという姿が、皆の脳裏に刻まれたことと思います。

そのあと静岡市長田辺信宏氏、静岡商工会議所会頭酒井公夫氏、静岡大学長石井潔氏によるご挨拶がありました。

そして第二部の中川さんによる「障害者と囲碁~最先端ICTが開く世界」というご講演が始まりました。
中川さんは、実際にどうやって晴也さんが囲碁を打っているかを、映像でわかりやすく解説されました。その様子を観客席の最前列でじっと見つめる晴也さん。晴也さんは、人が話していることは全てわかっているけれど、言葉をうまく発せられないがゆえ、思いや考えは溢れるほどあるのにそれを伝えられないまま、15歳になりました。けれど視線入力装置により、少しずつ言いたいことをパソコン上に表すことができるようになったのが、最近のことです。ずっとそばにいるお母様には、晴也さんが発する短い言葉は理解できるようですが、晴也さんの思いがこもる長い文章をもしこの先読めるようになれば(なると思います)、劇的に母子のコミュニケーションは進むと思われます。

また晴也さんは囲碁にも関心を持たれているので、このまま上達していけば、囲碁を通して晴也さんの可能性や世界は無限に広がっていきそうです。たとえば囲碁インストラクターになったり、本を書いたり、講演したりして、同じような障害を持つ人に希望を与えられるかもしれません。木谷さんも中川さんも、それを願って一所懸命晴也さんを応援されているところなのです。

・・・ ここまで書いたら、もう今日はあと2分になってしまいましたので、とりあえずここで一旦投稿します。
続きは明日の日付になります。


さきほど、夜の9時半頃ですが、静岡から帰ってきました。
静岡と品川は、新幹線なら55分と近いです。

帰宅すると、犬猫計3匹が、玄関に飛んできて歓迎してくれました。
何度も電話やりとりしていたコウジさんも、「ママちゃ~ん!」と大喜び。大学が休みで家にいたワッチは、父親(コウジさん)の相手をずっとしていて疲れたそうで、「やれやれ、相手してくれる人が帰ってきてほっとした。」とげっそりしていました(笑)。

「障害者と囲碁」イベントは、とても楽しく考えさせられる、中身の濃いイベントでしたので、それについては明日ゆっくり書きますね。

今日は、昨日お約束した、「NPOチアプラム設立記念講演会」のお知らせです。

【NPOチアプラム設立記念講演会】

日時:2018年3月4日(日) 13時~15時20分
場所:秋葉原UDX Theater (千代田区外神田4-14-1 4F)
入場無料・事前予約制

13時~13時10分 開演のご挨拶
 小松泰喜氏(NPOチアプラム理事長)

13時10分~14時10分
講演第1部 「パラリンピックアスリートにみる脳の再編」
講師 中澤公孝氏(東京大学大学院総合文化研究所教授)

14時20分~15時20分
講演第2部「高次脳機能障害者家族が望むこととこれから」
講師 柴本礼(イラストレーター 『日々コウジ中』著者)

ご予約・お問い合わせ → NPOチアプラム事務局 office@cheerplum.com
(これはメールアドレスなので、ここにお名前、年齢、参加人数を書いてお送りください。)

講演会場へのアクセス ①JR秋葉原駅電気街口より徒歩2分
                ②つくばエクスプレス秋葉原駅A1出口より徒歩3分
                ③東京メトロ日比谷線秋葉原駅2番出口より徒歩4分
               ④東京メトロ銀座線末広町駅1番または3番出口より徒歩3分

チアプラムとは? → 脳損傷による高次脳機能障害をもつ当事者・ご家族のための支援サイト、「Ceerplum.com」 を運営するNPOです。

現在日本大学の小松泰喜教授や上智大学の石川ふみよ教授らが東京工科大学教授だった頃に、国の助成を受けて開発したサイトが中断していたものを、このたびNPOを設立して継続していかれることになったそうです。 私は東京工科大学の授業に、何度か講師として招いて頂いたのでご縁があります。

私自身、どのような支援サイトができて、どのように今後運営されていくのか大変興味がありますので、今から楽しみにしています。
皆さんも、ふるってお申込み下さい。

それではまた明日!

明日2月10日(土)、お昼の12時から静岡市民文化会館大会議室で、「障害者と囲碁 ~共に生きるフォーラム&記念対談」があります。入場無料、当日受付ですので、是非いらして下さい(私が登壇するのは、13時40分の第三部トーク「障害者と囲碁」からです。詳しいスケジュールは1月23日の私のブログをお読みください)。

これは翌2月11日~18日まで催される、静岡市主催「徳川記念世界囲碁まつりイン静岡」のプレイベントですので、そちらのお祭りの方もどうぞ宜しくお願いします。http://shizuoka-go.jp/

ところで昨日の私のブログに、木谷正道さんがコメント下さいました。
皆様にも是非読んで頂きたいと思いましたが、コメント欄を読まれない方もいらっしゃると思い、急遽こちらのブログ本文の方に木谷さんのご了承を得て転載することにしました。

*****
 礼さん、皆さん、木谷正道です。
 昨日、礼さんからメールをいただき、とても大事なことだと思ったので、ブログで紹介してくださるようお願いしました。

 昨年2月にご夫妻を始めたくさんの当事者とご家族に碁を教え始めました。
 三回目の4月に、コウジさんは19路盤(正規の大きな碁盤)で、しかも6子で僕に挑戦しました。「子」はハンデキャップで、最初に盤上に置く置石のことです。三回目なら、どうがんばっても9子でなければ打てません。
 ところが、何としっかりした碁になっているので大変驚きました。健常者でもあまりないことです。
 他の方々も含め、高次脳機能障害は囲碁習得の障害にならないことが分かりました。これだけでも大きなことでした。

 そして一年後の今(まだ一年)、礼さんが言われるように、囲碁が高次脳機能障害のさまざまな症状の改善に役立っているようです。僕はご自宅に戻ってからのコウジさんを知りませんが、会の中ではまったく違和感を感じません。じっと思考するときの表情は美しいです。
 僕には「囲碁の可能性」としてしか語れないことが、当事者を一番身近に観察している方の言葉として語られていました。正直、大変驚きました。
 相対して碁を打つと、脳の全部位の血流が増加することが、かなり前の研究で分かっています。これが脳機能障害の改善に効かないはずはないと思っていましたが、実際にこのように裏付けられたのは、多分初めてだと思います。
 ぜひ、専門家の皆様にフォローしていただければと思います。

 会の雰囲気はとても楽しく、皆さんにお見せしたいです。
 「碁を始める前とは見違えるようだ」と、お世話してくださるフォーラム大田高次能の栗城さんや目黒の濱出さん、ご家族の方々が異口同音におっしゃっています。
 これだけでもすばらしいことだと思います。
 老若男女、障害や難しい病気があってもなくても、誰もが楽しく人生を過ごすことができる。
 囲碁がそのお手伝いになれば、こんなに嬉しいことはないです。

 例会は毎月第一日曜の午前、大田区総合サポートセンターで開催しています。
 どなたでも参加できますので、ぜひ一度、お出かけください。
 
 今日、静岡に行き、明日12時から、静岡市民文化会館で「障害者と囲碁~共に生きるフォーラム」を開催します。
 出演者は、柴本礼さん、柿島光晴さん(全盲の棋士)、東海林晴也君(全身性障害児・15歳)、浅野史郎さん(前宮城県知事)、北川正恭さん(前三重県知事)など、素敵な皆さまです。
 東川悦子さん、静岡の小関さん、滝川さんも参加されます。
 どんな内容になるのか、ワクワクしています。

 つい力が入り、礼さんに負けないぐらい(笑)長い文章になっていました。
 お読みいただき、ありがとうございました。

 それではまた。
 今日も一日、元気な笑顔で! 
*****

木谷さん、有難うございました!

ということで、明日は私は朝から静岡へ行くのですが、コウジさんが寂しがること、寂しがること(笑)。
「やった!明日から三連休だ!あ~、でもママちゃんいないのかあ。つまんないな。」 そればっかり言っています。夜には帰るのに、なんでこう甘ったれになったかなあ。
でも記憶障害の重いコウジさんなのに、「三連休」「私は静岡」という2つのことは、しっかり彼の頭にインプットされているんですよね。ここが不思議。だから、「まだらな記憶」と言われるこの障害です。

たとえば昨夜の夕食後、数分経つとコウジさんはもう食べたものを忘れています。
ちなみに昨夜は私は、生鮭のソテー、ブロッコリサラダ、大根やゴボウや人参、ネギなどが入った具沢山お味噌汁(こういうのがコウジさんは大好きです)をなど簡単なものを作り、買ってきたカキフライ(コウジさんの大好物)、納豆(これもコウジさんの大好物)その他数品を食卓に並べました。

私が半分も食べないうちに、ご飯を2杯平らげて「あ~おいしかった!」とソファに移動したコウジさん。ためしに、「今何食べたか覚えてる?」と彼にとってはあまり面白くない質問をすると、やはり「ん・・・?」と言葉に詰まります。まだ食べ終わって2、3分だよ? 待っていても返事が出てこないので、「なんで忘れちゃうかね。これじゃ、私が何作っても同じだよね。じゃあ明日は忙しいからお弁当でも買ってこようかなあ?」と言うと、「あ、ボクそれでいいよ!覚えていないから。」と堂々とのたまいました。(でもお弁当を買いに行くのも面倒なので、家にあるもので作ってしまいます。)
正解を教えると、「ああ、そうだった!」と思い出すので、やっぱりコウジさんの記憶の引出のどこかにはしまわれているんですよね。そこが認知症の方と違うのだろうな、と思います。

「じゃあ、豪華なビーフシチューだったりすると、覚えてるの?」と聞くと、「それなら覚えている。」と答えます。
実際は、そういう豪華な献立の時も忘れていましたけれどね。食事がすごく豪華だった、ちょっと豪華だった、普通だった、ちょっと質素だった、すごく質素だった(笑)、という程度の記憶なら、かろうじて残っているかな、という印象です。いや、それもどうかな、怪しいかも・・・
いえ、覚えている時もあるんですよ。なので、本当に不思議。いつも覚えていればいいし、いつも忘れているならそれも仕方ないけれど、そのどっちでもない、まだらなんですよね。
まあいいや、生きるか死ぬかが関わる問題でもないから、とあんまり気にしなくなりました。

今朝ウメの散歩をしながらも、人間の記憶って、「嫌な記憶」は何年経ってもその時の気持ちを強く覚えているものだけれど、「楽しかった記憶」って、なんとなくぼや~っと優しいオブラートに包まれた、曖昧なものになるなあ、というようなことを考えていました。(ウメの散歩中は、色々思考する時間になっています。)

幼稚園児だった時に、意地悪で怖い先生から怒られて皆の前に立たされ、大泣きした悲しい記憶。小学生の時、意地悪でキツイ先生から理不尽な言葉を投げられ驚き傷ついた記憶(その先生は色々な生徒をターゲットにいじめていました)。大学生だった時、授業をさぼって遊んでばかりなのに試験前になると子分を使ってノートを借りに来させた学生と公然と大喧嘩した記憶。勤めていた時も、色々あったなあ・・・。そういう「嫌な記憶」は、みんな覚えています。覚えていて、思い出すとまた、とても嫌な気持ちになります。でもそれ以外の、「楽しかった記憶」や「楽しくもないけれど嫌でもない記憶」は、ぼんやりしています。

(・・・ とすると、戦火の中で生まれ育ってきた子供たちの心の中は、こんなつらく悲しい思い出ばかりが溢れているのではないでしょうか。 同じ一生なのに、不公平すぎます。何か自分でもできることを、しなくては。)

ところが、コウジさんが倒れて2年半の人生一番つらかった日々は「嫌な記憶」ですが、それが現在、普段生活している中では、ぼんやりした「楽しかった記憶」「楽しくもないけれど嫌でもない記憶」と同じような感覚で私の中にあります。これは、一体どういうことでしょうか?

それは多分、コウジさんが障害を負ってからの13年半が、最初のその2年半こそひどかったけれど、それからは段々と、自分にとって良い年月を重ねてきたと思えるからでしょう。今そう感じられるからこそ、その起点となったコウジさんの発病と受障さえも、良いイメージに変わってきたのだといえます(受障したばかりの方やご家族には、びっくりされる考えだと思いますが)。そしてもちろん、なによりも、コウジさんの命が助かった喜びと、そのことへの感謝が大きかったことが一番底にある私の思いだからでしょう。
周りで支えて下さり、手を差し伸べて下さる人たちのおかげでここまで来られましたが、コウジさんが病気にならなければ、世の中にはこんなに「他人のため」に真心から動いてくれる人がいるなんて気づかなかったと思います。自分の人生が順風満帆だと、他人の痛みに気づきづらいことは否めません(順風満帆でも気づける立派な方もいますが)。また、つらい経験をした人は、ほかの同じ経験をした人の痛みがわかります。
支えてくれる人たちがいること、同じ経験をして人の痛みがわかる人たちを知ることができた私は、幸せだと思います。

こうして、コウジさんのおかげで、視野も広がり、多くのことを学ばせてもらってきました。コウジさんと一緒に生きている今は、楽しいです。
そして、コウジさんと一緒に囲碁を始めたことも、楽しいです。
それは、コウジさんを温かく迎えて下さる居場所(大森の囲碁の会)があり、そこに2人で行ける、つまり一緒に楽しい温かい居場所を共有できるからだと思います。しかも、コウジさんの障害症状改善も期待できるのです。
この居場所を作って下さった、木谷さん。大田区と目黒区の家族会の方々。本当に有難うございます。

もう今から明日の用意があり、最後の方は駆け足でまとまりのない文章になった気がしますが、どうぞ明日はお近くの方、いらして下さいね!

また3月4日(日)に秋葉原UDX Theater(秋葉原駅から徒歩3分ほど)でNPOチアプラムさん主催講演会がありますが(13時~15時20分)、そのお知らせは今日はもう長くなりましたので、明日にします。
ちなみにチアプラムさんとは、脳損傷による高次脳機能障害を持つ当事者・ご家族のための支援サイトを運営するNPOで、3月4日はその設立記念講演会となります。
入場無料で200人ほどは入れる会場だそうですが、事前予約制とのことですので、明日お知らせしますね。

ではまた明日。





今週末の土曜日(2月10日)に、静岡で「障害者と囲碁」というイベントがあります(1月23日の私のブログ参照)。そこで私はパネリストとして登壇することになっているので、私の囲碁についての考えをまとめてみました。ちょっと長いですが、ご関心のある方はお読みください。

まず最初に、皆様ご存知のように私も夫(高次脳機能障害者)も、囲碁はやったことがありませんでした。
夫は将棋なら子供のころにやったそうですが、囲碁経験は私同様、皆無とのこと。

今からちょうど1年前の昨年2月に、木谷正道さん(木谷實九段のご三男)からお誘いを受け初めて碁石を手に取りました。 元々意欲低下が症状のこの障害ですが、私に引っ張られて参加した夫は、意外にも 「僕は囲碁に向いているような気がする。」 と感想を述べました。その前向き発言に(おや、珍しい。夫がやる気になっている。)と気づいた私は、ためしにこの会への参加を続けてみることにしました。もしその時 「僕は興味ない。やらないよ。」 と夫が言えば、残念ですが参加しないつもりでした。

それから1年。サポート役の私が家事や仕事で忙しくて、なかなか自宅で夫と囲碁の時間を持てずにいます。4月から通い出した石倉昇先生教室も何度か用事で休みましたし、なんとなく自分は向いていないような気がして(笑)、今までのところ熱心な生徒とはいえません(これからは、ちょっと本気になりますよ)。
でも負けん気は強い方ですし、囲碁はたしかに面白いと思いますので、自分は向いてはいないけれど、夫をサポートするために教室も通い続けています。また、自分がもっと高齢になった時に、囲碁をやっていることで認知症予防になるかな、という期待もあります。

そんな頼りない私は、教室で配られたプリントを夫と解いていても、教室ではわかったはずなのに、教えようとした時にはわからなくなっています。夫は呆れて碁盤から離れてしまいます。(誰か私達夫婦のそばにいて、教えてくれたらいいのに、そうしたら夫はもしかしたら驚くほど上達するかもしれないのに、という思いはあります。でも、ないものねだりです。)

ネットで無料でできる「今日の詰碁」や「今日の一局」を、夫にも時々やってもらいますが、まあまあかな、という感じです。

NHKEテレで日曜お昼から放送している囲碁番組は、「なにやってるかわからない。」と私も夫もすぐ飽きて見ません。もっと「超」初心者向けなら見ますが、出演されているダイアナさんだって私達からしてみたら、結構上級者なのです。

石倉先生の囲碁教本は、私は読みますが夫は面倒臭がって読みません(障害症状の1つ)。

結局夫が囲碁をするのは、大森の月一回の集まりの時に2局ほどと、実家で母と月5~6局のみです。

そんな感じの夫ですが、それでも1年前に始めた時よりは囲碁のことが少しはわかってきたようで、ネットの「今日の一局」や畏れ多くも高尾さん井山さんとの「名人戦」では、次の一手を予想し当たったことも結構多いです。

さて、夫の高次脳機能障害症状1つ1つについて、囲碁がどう効果があるかを私なりに考えてみました。

①「記憶障害」・・・ 昔のことはよく覚えているのに、新しいことを覚えられない。少し前、あるいは直前のことを覚えていない。何か行動している時に目的を忘れると、遂行に支障が出る。(私の講演資料から抜粋)

夫は今食べたもの、今会ってきた人、今家に来た人などすぐ忘れるかなり重度の記憶障害があります。ですから一手碁石を打った時に自分がどういう戦略でそこに打ったかを、次の手の時には忘れている可能性があるのでは、という心配があります。けれど夫は19路盤でなんとか打てています。ということはこの1局の間は記憶が、かすかずつでも持続しているのでは、と思われます。あるいは忘れるけれどまた思い出したり、忘れる時間を短くして覚えている時間を長くするトレーニングが、夫の頭の中で潜在的に行われていたりする可能性があります。 →すなわち囲碁は、記憶障害のリハビリになると思います。

②「保続」・・・ 同じ言葉を繰り返し言ってしまう。直前の言葉をひきずってしまう。

たとえば夫は、誰かが言ったことをそのすぐあとで自分の発言と思い込んで発します。クイズ番組で前問の答えを、次の問題の時の答えとしてまた発言します。

1月7日の大森でのイベント会場で、夫は信田六段に対局して頂きました。すると夫は信田先生の打たれるところ、打たれるところについて打って行きました。対局後、信田先生からは「自分の地を作るようにするといいね。」とアドバイスを受けました。  けれど2月4日の大森のいつもの会でも、夫は同じ障害当事者(おそらく夫よりは軽い)で囲碁の腕は夫よりずっと上の(学生時代に囲碁部だったそうです)Sさんの打つところ打つところに、やはりついて打っていました。Sさんは碁盤の3線4線をぐるりと囲んで打っていて、夫はその上に張り付いて打っていたのです。これは変だと思って、会場に着いたばかりの囲碁ボランテイアのKさんに「Kさん、大変なことになっています!」と来てもらいますと、「いや、こういう打ち方もあるんだよ。武宮さんがそうだ。」と。木谷さんもいらして、「武宮さんの宇宙流だ」と。でも結局夫は大敗しました(笑)。

相手が打ったところにくっついてしまうのは、私は多分高次脳機能障害の「保続」の症状だと思います。このような打ち方をしないように自分で気を付けるようにすると、保続もなくなっていくのでは、という気がします。 →つまり囲碁は、「保続」解消のためのリハビリにもなるのではないでしょうか。

※私は専門家ではないのですが、「保続」と「依存」は関係があるように思います。夫はこの障害を負ってから幼稚になり、私に依存するようになりました。そこには障害を負っていることからくる漠然とした不安、自信の無さがあるのかもしれません。人の言葉を真似したり、人の行動に付いて行ってしまうのは、不安や依存のせいかもしれません。もっとも夫に「あなたは不安ですか?」と聞いても、「全然!問題なし!」という声が返ってくるように、自覚はないようです。
もちろん、この障害は100人いれば100通りですので、夫は1例に過ぎませんが。

③「注意障害」・・・ すぐ飽きて集中力が続かない。気が散る。複数のことが同時にできない。

夫が2局も(2月3日は続けて2時間半!)集中して囲碁をしていたのには、驚きました。某専門家(医師)によると、「高次脳機能障害の人は、大体45分くらいで集中力が途切れます。」と言われていますが、夫もいつも大体そんな感じですので。 →つまり、囲碁は「注意障害」のリハビリになるのではないでしょうか。

④「遂行機能障害」・・・ 作業を計画的にこなせない。間違いを修正したり、計画を変更したりできない。物事の優先順位がつけられない。

障害を負った夫を13年以上そばで見てきまして、この「遂行機能障害」だけは改善が見られる症状です。それは受障して2年半で障害者枠で企業に雇用されたことが大きいと考えられます。会社は効率の良さが求められますから、働くうちにいつしか夫も効率的に動くにはどうすればいいか、という考え方が戻ってきたといえます。(ちなみに夫は大学卒業後は都市銀行勤務、転職して外資系経営コンサルタント会社、起業して1年でくも膜下出血により高次脳機能障害になりました。元々は野心溢れる効率第一の人でした。その部分が少し戻ってきた感じです。) 囲碁もこの「計画」「物事の優先順位」が要求されますから、「遂行機能障害」改善に効果があると思います。

⑤「行動と感情の障害」・・・ 感情や行動をコントロールできない。怒りやすい。泣きやすい。暴言や暴力。強引。他人への気遣いや状況判断ができない。幼稚。やる気がない。こだわる。引きこもる。

囲碁をしている時の夫は、静かに考えています(当たり前ですが)。普段の生活ではテレビに向かって暴言を吐いたり、TPOに合わない言動をし、家族は悩んだり傷ついたりしますし、この障害を知らない人には驚かれたり怒られたりします。 けれど大森の囲碁の会では、木谷さんをはじめ皆様とても紳士的で優しく、いつも夫を温かい笑顔で受け止めて下さるので、夫のそういう面は影をひそめ、夫も穏やかな笑顔で過ごしています。(元々はそういう人でした。)
囲碁をしている時は頭が忙しくて暴言を吐く暇がないこと、囲碁の場が暖かな社交場で夫には居心地が良く、暴言とは縁遠い世界で夫の感情も落ち着いていることから  →囲碁は「行動と感情の障害」が起きる場面を少なくすると思います。

⑥「地誌的障害」・・・ よく知っている場所でも道に迷う。道が覚えられない。

一昨日も、夫はよく知っている近所で迷いました。携帯電話で私が教えながら犬と探すと、なんとか合流できました。地図を持たせると読めるようにはなりましたが、一昨日は地図を持たせようとすると、頑固な症状と過信(自分の障害を軽く見ているか、障害がないと思っている)が出て「これくらい覚えられる!」と地図を持たずに家を出て、案の定迷いました。
囲碁では、いわゆる方向感覚というものが必要なのかわからないのですが、「細部と大局」の両方を読む力が鍛えられる囲碁ですので、近所の地図(大局)を頭に描けるようになれば迷わないはずで、 →「地誌的障害」の改善にも役立つのでは、と思います。

ほかにも夫には、「作話」(本人にはその意識はないが、勝手に話を作ってしまう。かすかな記憶を繋ぎ合わせたものや、全くでたらめのものもある)や「病識の欠如」(自分に障害があると思っていない。病識があれば、メモをとるなどの補完手段が取れる)、「金銭管理ができない」(あればあるだけお金を使いたがる、家の貯金がいくらあるかなど関心がないし、間違えた認識をしているので、契約などは絶対させられない。)などの症状があります。これらの症状改善に効果があるかは、今のところまだ定かではありません。

でも、見えているのに左半分、あるいは右半分が認識できない「半側空間無視」という症状にも、囲碁は効果があるかもしれません。碁盤全体を見渡さないと戦えないので、意識して見るようになるのではないでしょうか。

以上、あくまでも高次脳機能障害者を毎日そばで見ている家族としての見解です。医師や専門家の方々が、データや裏付けを取られながら出された報告書ではありません。でも、今まで高次脳機能障害者に囲碁が与える効果についての研究やレポートは目にしたことがありませんので、この私の意見が、今後そのような研究が始まった時にご参考になれば幸いです。また私も、そのような研究が進むことを望んでいます。

・・・ このような文章を木谷さんにお送りしたところ、もし囲碁を高次脳機能障害の克服に役立たせたい方、団体、施設関係その他がいらしたら、木谷さんや日本棋院の方々、大学囲碁部の方々などにできるだけつなげて、応援して下さる、という心強いメッセージを賜りました。ご関心のある方は、どうぞコメントでご連絡下さい

さて、井山さん、残念でした!謝爾豪さんはお強いですね。中国の囲碁層の厚さを感じます。
でも井山さんもずっと勝ち残ってらして、柯潔さんも負かしての見事な準優勝です!すごいですね!

ただ、負けたあとにすぐインタビューを受けなくてはいけないというのは、しんどいでしょうね。見ていて可哀想になりました。そういうこともこなさなくてはいけない精神力の強さも、体力や知力のほかに必要なのでしょうね。大変なゲームですよ、囲碁というものは。
とにかく、お疲れ様でした。





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