日々コウジ中

日々コウジ中 - クモ膜下出血により、さまざまな脳の機能不全を抱える“高次脳機能障害”になったコウジさんを支える家族の泣き笑いの日々

2018年02月

昨日の夜ご飯は「味噌煮込みうどんにしようね。」、とコウジさんと決めていました。
でも夜ご飯はいらなかったはずのワッチが帰ってきて、「ピザが食べたい!」と言うと、コウジさんまで「僕もピザが食べたい!」と心変わりし、ピザになりました。

でもピザって、とても高いですよね。3人で食べたら5千円くらいしちゃうので、テイクアウトにしました。テイクアウトだと、半額になるらしいので。 

取りに行くのは、コウジさん。「僕が行くよ!」と張り切るので、有難いです。でも、家から徒歩10分くらいのその場所に無事辿り着けるか心配な私は、地図を書きました。今までテイクアウトで何度か行ってくれたことがあるのですが、ここ2年くらいは行っていなかったので。

けれどコウジさんは地図を見るなり、「こんな地図要らない。覚えた。簡単。」と出て行こうとします。せめて携帯電話は持って行って、と頼むと、不承不承それは持って出かけました。

コウジさんが珍しく夜間に家を出て行くので、犬のウメが興奮して付いて行きたがりました。私もなんとなくコウジさんが心配だったので、携帯電話を持ってウメの散歩がてら、ピザ屋さん方面を目指すことにしました。

するとしばらくしてコウジさんから電話が入りました。なんだろう、と思って出ると、「今、〇〇が目の前にあるんだけど、場所がわからなくなっちゃった。」という心細げなコウジさんの声。

なんとそこはピザ屋さんからずっと離れた場所なので、なんでそっち方面へ行ってしまったのだろう、とがっかり。受け取り時間に遅れてしまうから、携帯で「〇〇を前に見て、駅とは逆方向に歩いて」「信号を左に曲がって」など指示しながら、急いでウメとピザ屋さん方面へ歩きました。そして向こうから大声で電話で話しながら歩いてくるコウジさんを見つけ(もちろん電話の相手は私)、無事合流できました。

こんなことなら、私が行けば良かったよ。トホホ。
コウジさんがなぜ迷ったのかはわかりませんが、やはり地誌的障害は残っているんだなあ、と思いました。
コウジさんも「携帯を持ってて良かったよ。」とほっとしていました。

家でちょっと冷めたピザを食べましたが、ワッチは「私は冷えたピザが結構好き!」と喜んでいる、変り者です。

ところで昨日コウジさんは、有休を取って病院で受診でした。私が車で病院まで連れて行き、待合室で順番を待っていると、そこにあったテレビに内田由紀さんが映っていました。特技がフェンシングだそうで、なかなか様になったポーズをとっているのを見たコウジさんは、「「いいな、ボクなんか何も得意なものないからな。」ってぼやきました。

そこで私が、「じゃあ、囲碁は? ”囲碁初段”てカッコイイんじゃない?」と言ったら、「うん、カッコイイな。よし、初段を目指すか。」と乗り気のコウジさん。

帰宅してぼ~っとソファに座っていたコウジさんに早速、「囲碁やる?」と聞きました。すると、「やんねーよ。」とすげない返事。「なんで?病院で初段目指そうか、って言ってたじゃない。」と言うと、「そんなこと言ってた?」と忘れています。

私がなおも、「やらなきゃ初段になれないよ。」とせっつくと、「なれるんだよ。」と答えます。
驚いた私が、「どうやって?」と尋ねると、「可哀想だな、と思う人が出てくるんだよ。初段やろうか、と。」と言うのでおかしくなりました。 「囲碁の勉強を全然しないで?」と聞くと、「少しするんだよ」ですって。

「へ~」、と呆れた私は、病院行ったので疲れていたせいもあり、それ以上誘うのはやめました。

話は戻りますが、病院でもおかしいことがありました。
診察室に入ると、W先生がコウジさんに、「相変わらず猫をいじめてるんですか?」と聞かれました。『日々コウジ中』の中にも描いたように、またコウジさんは猫(ハルとチー)を構い過ぎて、猫たちに嫌がられているのです。

コウジさんは、とんでもない!、とばかりに、「いじめていませんよ!」と胸を張ります。
私が「いじめてるじゃない。昨日もチーがニャー!って怒ってたじゃない。」と言うと、W先生は、「そういう時、引っ掻かれないんですか?」と聞きます。するとすかさずコウジさんが、「引っ掻かれます!」と言って手の甲についたひっかき傷を先生に自慢げに見せました。
これで、「いじめていませんよ!」というコウジさんの言葉が嘘だったことが証明されたのですが、コウジさんはそこには気づかないんですね。W先生の方が上手(うわて)です。

・・・でも猫たちはコウジさんのことを本当に嫌がっているわけではないようで、寝る時2匹はコウジさんの布団の上や中で毎晩寝ているんですよ。

いつも服用したり塗布したりする薬を処方してもらって病院を後にしましたけれど、W先生にお会いすると私もコウジさんも安心します。もうかれこれ13年お世話になっていますから、コウジさんのことは何でもわかって下さっています。

さてさて、今日は興奮しました。
井山裕太さんと中国の謝爾豪さんとの世界戦LG杯第2局、ネットで見ていましたが、負けそうだったのに粘った井山さんが、わずか半目差で勝ちましたね!
これで1対1です。明日の3局目で、どちらが世界王者になるか決まりますので、ドキドキします。
井山さん、お疲れだと思いますが、どうぞ頑張って下さい!!

高次脳機能障害ブログなのに、最近囲碁話題と犬猫話題が多く、すみません。でもこれが今の私の生活ですので、特に棋聖戦第四局(大船渡)が終わる今月半ばまでは、こんな話題が多いかと思います。
今日の話は、とても長いです。

今朝の散歩で、ウメにいつもと違うルートを引っ張られて歩きましたら、大きなアフガンハウンドがいました。滅多に遭わない犬種なので、「5、6年前に一度お会いしましたか?」と記憶を頼りに尋ねますと、「ああ、それは前の犬です。あの犬は亡くなったんですよ。」と飼い主さんはしんみり答えます。「あの犬はフレンドリーでしたが、今度の犬は神経質で、仲よくできないと思います。」とも。そのそばにビーグルの子犬を連れた人がいたので、連れている人は違うけれど、最近仲良くなったクッキーちゃんかと思い、「クッキーちゃんですか?」と聞きました。するとその飼い主は、「クッキーちゃんはガールフレンドです。うちも前の犬が死んで、これは2代目です。」と答えました。

「はあ、クッキーちゃんもチョコちゃんが死んで2代目ですから、皆さん代替わりですねえ。うちも来週11歳になり、シニア犬ですよ。」と言いますと、皆共通した思いが胸をめぐるのでしょう、寂しそうな目で自分の犬たちを黙って見つめました。

飼っていた犬が死んで、しばらくしてまた新しい犬を飼う人の気持ちがわかります。これは壊れた物を新しく買い換えるのとは全く違う心境がそこにあり、前飼っていた犬が可愛くて大切だったからこそ、その思いが強すぎるからこそ、また飼うのです。新しい犬は前の犬とは違う犬ではあるけれど、その犬には必ず前の犬への飼い主さんの思い、愛情が重なっています。そうして前の犬は永遠に生き続けるのです。新しい犬は前の犬の代わりではないのです。2匹分の命を抱いて、生きているのです。
愛犬(猫)に死なれると、身を引き裂かれるような悲しみを覚え、しばらくは自分が生きているのか死んでいるのかさえわからない、空虚な心の日々を送ります。それがわかっていても、また飼ってしまうのは、やはり愛犬(猫)との生活が幸せだったからにほかなりません。
私も愛猫おはぎちゃんとのつらい別れから5年、次はこの愛おしいウメとの別れが近づいていることを、考えない日はありません。でもまだ大丈夫。元気いっぱいなウメと今日も1日2回の散歩に出かけられることを、感謝しています。

朝からそんなことを考えながら帰宅した私ですが、昨日の大森での囲碁の会の話を書こうと思います。

相変わらず記憶の悪いコウジさん、前日に何度も囲碁の会の話をしたのに、昨日の朝になるとすっかり忘れています。でも私に早くから起こされ、朝食を取り、用意された服(自分でも用意できますが、寒暖に合わせたり上下の組み合わせ、上着の選択などうまくできません)に着替えると颯爽と一緒に出掛けます。こちらは、囲碁の会に行くことはインプットされていると思うじゃありませんか。ところが・・・

駅に着いて電車を待っている時に、コウジさんは私に向かって言いました。「ねえ、今日どこへ行くんだっけ?」と。 ・・・ いやいやいや、またですかい。やっぱりですかい。
「どこに行くかわからなくて出てきたの?」と聞くと、「うん。マーちゃん(私のことをママちゃん、と呼ぶのですが、最近はそれがマーちゃんになってきています)についてきただけ。マーちゃんと一緒だと楽しいから。」と。

それはどうも。でもそれって、まるで子どもと同じじゃん。わかっちゃいるけれど、やっぱり情けなくなって、満面笑顔の夫を見る。
「囲碁でしょ。木谷さんの。」と教えると、「ああ、そうだった!」とアハ体験(茂木健一郎さんの番組の)で喜ぶ夫。電車で横に並んで座っていると、「最近、いつもお前(お、マーちゃんじゃない時もあるのだね)とこうして一緒にどこかへ行ってばかりじゃない?」とニコニコして話しかけてくる夫。

そうだねえ、病院だけでなく、大森の囲碁の会、その大田文化の森でのイベント、世田谷高次脳機能障害連絡協議会主催「春の音コンサート」、私の実家へ母と囲碁をしに行く、などいつも一緒ですねえ。本当は映画や美術館へも行きたいのですが、そういう娯楽へ向ける時間がないのがちょっと残念。ちなみに今私が見たい映画は、人間ドラマでもネイチャーものでもサスペンスでもなく、「KUBO」というアニメ。
テレビでアメリカ人の男性監督が、少年の人形を作ってそれを1コマ1コマ動かしながら膨大な時間を使って作ったというその映画。舞台は江戸時代?の日本で、当時の服装や街並みも再現した力作というので、見てみたい!とずっと思っています。宮崎駿監督や黒沢明監督らの影響を受けたというその作品は、外国人でありながら日本の良さを認めて追及してくれているそうなので、改めて日本の良さってどこにあるのか映画を見て考え直してもみたいです。でも見たい見たいと思っているうちに、近所の映画館では上映が終わってしまっていたのを今知り、ショックを受けています(涙)。

また得意の脱線をしました。
とにかく最近とくに一緒に出掛けることが増えた理由は、やはりともに取り組んでいる共通の趣味、囲碁のおかげでしょう。高次脳機能障害者とその家族が、共通の趣味や好みがあると、一緒の行動や会話も増えるでしょうね。
昨日の会は、囲碁を教えて下さる囲碁ボランテイアの方が木谷さんとKさんしかいなくて、噂を聞いてやってこられた初心者がずら~っといらっしゃいました。木谷さんは次々やってこられる初心者(高次脳機能障害者とそのご家族とか、難病の方とそのご友人とか)に、2度に分けて講義をされていました。私も何度も聴きたいその講義ですが、夫も気になるし、教えてくれる人がいなくて「先生~、先生~」と声を上げてらっしゃる初心者も気になるし、あちこち席を移動するのに忙しかったです。

夫は、同じ高次脳機能障害者でありながら、学生時代囲碁部に入っていたというSさんと、2局も対局しました。夫よりはずっとうまいので、いつの間にか教える側、教えてもらう側となっていました。私も石倉先生教室ではいつまでたっても初心者なのに、その日初めて碁石を持つという、私の上をいく初心者には、なんといくらでも教えることができました。アタリ、着手禁止点とその例外、地を広げたり境界を作ったりする打ち方、など、それくらいなら教えられます。いつも教わる側ですが、教えるのもワクワクしました。なんだか自分がうまくなった気がして・・・。と同時に、(もっと本当にうまくなりたい。)という欲が出てきました。

意欲の低下が症状の1つである高次脳機能障害ですが、囲碁はその意欲を教わる側、教える側両方で高めてくれるものだと気づきました。

数年前に脳卒中から高次脳機能障害になられたという84歳の男性は、スキー指導のお仕事や山登りをされるというだけあってお元気そのもの。男性の娘さんの話では、男性は障害を負われる前は真面目で怒ってばかりで堅物だったそうです。けれど障害を負われてからは、その男性は人が180度変わって笑ってばかり、ジョークばかりの明るすぎるキャラクターになったそうです。男性は、「高次脳になって良かった!」なんて万歳されていらっしゃるくらい面白い方で、娘さんたちもクスクス笑いながら、一緒に囲碁を習っていました。

時間が来て解散となると、娘さんは小さな9路盤で打掛けの碁盤をそのまま、水の入ったコップをこぼさないように運ぶかのように、おそるおそる両手で持って運んで帰ろうとしました。
驚いた私は、「碁盤の写真を撮って碁石ははずして帰られたらいいじゃないですか。」と何度もアドバイスするのですが、「写真も撮りました。でも家はすぐそこなので、このまま運んで帰ります。」と言い張ります。

え~? そう言われる娘さんは、高次脳機能障害者ではなく、そのご家族なんですよ。それも非常にしっかりされた、先生が職業の女性です。なのに真剣な表情で、愛するお父様のために、小さな碁盤を両手で抱えて、人にぶつからないよう気を付けながらそろりそろりと歩いていられます。

戸惑いと驚きを覚えた私は、木谷さんにも彼女の姿を見て頂きたくて、「木谷さん、木谷さん!」と呼ぶと、その様子をご覧になった木谷さんもやはりびっくりして、「石は袋に入れて・・・」と慌てて袋を探そうとしました。けれど彼女は毅然と、「いえ、大丈夫です。このまま運んで帰ります!」ととうとうそのまま帰ってしまいました。いくら家が近いといっても、絶対家に着くまでのどこかで碁石を落としたり、碁石が動いたりすると思うので、おかしいやら、感動するやら。

今日初めて碁を習いやる気になっているお父様の姿を見て、咄嗟にそのような行動を取られた彼女は、お父様の回復と喜びを心から願う娘としての愛情を見せて下さいました。きっとこの場の熱気とお父様の気持ちが詰まった碁盤ごと、ご自宅に持って帰りたかったのですね。高次脳機能障害が、家族を結束させているなあ、と思いました。我が家のように(笑)。あのあと、教えてくれる人がいない家で、どうなったかなあ。

コウジさんは19路盤で2局打ち、終わらないうちに解散となりました。午後も希望すれば会は続くのですが、もう朝から頭を相当使いヘトヘトのコウジさんなので、帰ることにしました。実際1局でもうくたびれていたそうですから、よく頑張りました!偉い!お相手してくれた当事者のSさんに教えてもらってばかりだったのかと思いましたが、コウジさんは「自分でも考えたい。」と、自分で考えて打ったそうです。やった~、囲碁のおかげで、眠りがちな意欲が刺激されましたね。Sさん、有難うございました。

・・・ ふむふむ、多分コウジさんは、やっぱり囲碁が好きなんだと思いました。好きじゃなければ、ここまで自分に鞭打って頑張らないでしょう。こんなに彼の意欲が出てきたのは、受障後13年半という時間の経過のせいもありますが、好きなものに巡り合えた幸運のせいもあるでしょう。そういうものに出会えるよう、ご家族は当事者の方を色々なところに連れて行くといいと思いますよ。とにかく、外へ出て行くことです。
ただ、当事者の方によっては、外出が気が進まない人もいらっしゃると思うので、無理はしないことです。
たまたまうちのコウジさんは、元々出かけるのが大好きな人でした。

帰る時、毎回ご準備やお世話をして下さる大田区や目黒区の家族会の方々へご挨拶するのと同じように、木谷さんやKさんにも「では、さようなら~!」と帰ってきました。いえ、家族会の方々へはお礼を申し上げた記憶はありますが、教えて下さった木谷さんやKさんにはお礼申し上げず、「さようなら~!」だけでした。どんどん帰りたがる夫に気を取られ。

帰宅して、ハッとそこに気づき青くなった私。私達高次脳機能障害者と家族のために、お忙しい中囲碁を教えに来て下さっている木谷さんたちボランテイアの方々へお礼の一言も申し上げないなんて、なんて恥ずかしいことでしょう!帰宅してすぐお詫びとお礼のメールを送りながら、何故そうなったかを考えました。(でも木谷さんもKさんも、お礼の言葉など全然期待も気にもされていらっしゃらなかったようです。)
そしてわかったのは、この会では教える側、教わる側に普通はみられる上下関係がみられない(感じられない)からなのです。
さらに言えば、「高次脳機能障害者」が主役で、教えて下さる方はそのサポート(準主役)に、つい思えてしまえるからなのです。それはひとえに、木谷さんやボランティアの方がたの優しさとフレンドリーなご対応のおかげです。

最初は(有難い、有難い)と思っていた私も、1年経つうちにいつの間にか、この会が気心知れた仲間(もはや友人とも言える気安さを感じています)との遊び場のように思え、「遊びに来ましたよ~!」「ではまた次回~!」という気軽さにどっぷり浸かっています。甘えてしまっているのですが、それが許される雰囲気で有難いです。今日など、どなたかが持ってきて下さったみかんだとか、お菓子だとかを皆で食べていると、ここが自分ちの居間の延長のような気さえしてきました。
「気心知れた」、「気安さ」、「気軽さ」、このように軽い気持ちで集まれる場、というものが、高次脳機能障害者にも、普通の人にも、必要なのではないでしょうか。

もちろん何も目的がなくて、ただ集まってお茶飲んで話すという会もいいのですが、この大森の「高次脳機能障害と囲碁」の会には「囲碁の上達を目指す」という目的があります。やはり人間は向上心を持つ、成長していく生き物だと思いますから、その本能をくすぐられるこの会の持つ意義は大きいです。特に高次脳機能障害者には、「いろいろな人と会える」「温かく居心地のいい」「リハビリできる」場所が必要ですから、ここはまさにまさに、理想的な場だと思いますよ。

このような場所が、全国あちこちにありますように!


将棋の藤井聡太さんが、中学生として初めて五段になられたという快挙、おめてとうございます!
17日の朝日杯でもし羽生さんを破れば、六段になられるとのこと。
今は囲碁をやっている私ですが、まだあどけない中学生の藤井さんには母性愛をくすぐられ、応援しています。頑張れ、藤井さん!

ところで今朝のNHK「おはよう日本」は、今月5、6、8日に東京で行われる囲碁の世界戦(LG杯)の決勝大会について、対局する井山裕太名誉棋聖と、中国の謝爾豪さんを取材していました。井山さんはこれまで日本国内のスケジュールが立て込んでいたせいもあり、世界の強豪と対局する機会が少なかったと言われています。でも7タイトル全部の保持者であり、先ごろ国民栄誉賞も授与された日本で最強を誇る井山さんの目の向かう先は、世界。なるべくこれからは日本国内のスケジュールを都合付けて、世界戦に出て行かれることにされたそうです。

国を挙げて囲碁の英才教育を行っている中国で、ピラミッドの頂上に立つ1人の謝さんは、まだ19歳!囲碁が強い人は5~6歳と小さな頃から始められるので、今世界一と言われる柯潔さんは20歳ですし、井山さんに挑んでいる一力遼さんも20歳です。

でも番組を見ていて、中国と日本の差に驚きました。中国は学校へ行かずに何が何でも勝たなくては、と来る日も来る日も囲碁の勉強に明け暮れ、ある囲碁教室では負けると対局料を勝った相手に払わなけばならないし(100元。日本円で1700円ほど)、まずい碁を打つと、壁に向かって何十分も立って反省しなくてはならないそうです。レポートされていた吉岡芙由紀記者は、ご自身も囲碁の勉強を20年以上ずっとされていたアマ5段だけれど、日本はこんな競争の激しい雰囲気とは違うと言われていました。

都内に借りたマンションの1室で、一人静かにその日を待ちながら、過去に自分が負けた中国棋士との対局を検討されている井山さん。自分一人で大舞台で戦うその姿に、孤高の勝負師の厳しさを感じました。なんとか謝さんに勝って、世界一のタイトルを取って欲しいです。頑張ってください、井山さん!

その井山さんですが、現在棋聖戦の真っただ中にいらっしゃいます。7番勝負のうち、昨日で3局が終わり、挑戦者の一力遼さんに3回勝っています。今度の大船渡での4局目に勝てばそこで棋聖戦は終わり、棋聖タイトルを保持できますが、もし一力さんが勝てば、5局目に向かいます。(先に4勝した方が棋聖になります。)

仙台ご出身の一力さん、是非とも故郷東北で一勝して欲しい、と、両棋士を応援しながらも、一力さんの方をちょびっとだけ多く応援しています。

この大船渡での棋聖戦が実現したのは、多分木谷正道さんのご尽力も無関係ではありません。木谷正道さんは、昭和の名棋士、木谷實九段のご三男で、8人いらしたお子さんのうち棋士の道に進まれたのは、小林禮子さんお1人でした。その禮子さんが若くして亡くなられ、今囲碁に関係する活動をされているのは、正道さんだけです(ご次男の木谷明さんは、元東京高裁判事、最高裁調査官の弁護士。今は亡きご長男の木谷健一さんは、国立長寿医療センター研究所所長、とそのほかの兄弟姉妹の皆さんは、囲碁とは異なる世界でご活躍されています)。

昨年9月に、正道さんのお母様の美春様(このお母様もすごい方で、そのすごさは『木谷道場と七十人の子どもたち』『それも一局』などの本を読まれるとわかります。)のご実家である地獄谷温泉後楽館に「木谷道場ギャラリー」がオープンした時には、ニュースや新聞記事に取り上げられました。この時期、温泉につかるニホンザル見たさに、海外から観光客が押し寄せており、若女将の三枝さんが囲碁を教えてらっしゃるそうです。昨年は19か国の方がそれで囲碁入門されたそうですよ。HP→http://www.jigokudanionsen.com/

正道さんは棋士にこそなられませんでしたが、都庁退職後は高齢者や障害者支援、被災地支援、防災、バンドのヴォーカルとして各地を回られながら、囲碁普及に努められていらっしゃいます。この大船渡での棋聖戦は、囲碁普及と被災地支援、障害者支援(視覚障害者の用の碁盤、アイゴがあります)も含まれる、大きなイベントです。

そこで東京や仙台、盛岡から大船渡へ直通バスを出すことになったのですが、今のところ参加者がなんと、ほとんどいないそうです。私も囲碁仲間や近所で囲碁をされている方たちにお声かけしましたが、「遠い」「バスは疲れる」「平日は仕事がある」などの理由で、悉く断られました(涙)。人数が少ないので心配になり、急遽私も行くことにしました(そのための調整が色々大変でしたが)。

日時は東京組は2月15日夜東京駅発、17日夜東京駅着、バスは大型リクライニングで振動も少なく快適、ツアー催行会社はJTB系列の岩手開発産業で安心です。しかも価格が往復バス代(車内1泊)、現地1泊(プラザホテル)、4食つき、16日朝の温泉つき、大盤解説会費、交流会費、コンサート全て含めてで2万円という安さです。これは「お仕事ツーリズム」の連携企画だからこそ可能になった値段だそうです。
ちなみに仙台組は、2月16日朝仙台駅発、17日夕仙台駅着で21,500円。
趙治勲九段や山城宏九段、王銘琬九段、宮崎龍太郎七段、木部夏生二段もいらっしゃいます。後援は日本棋院、大船渡市、大船渡商工会議所など。
もし囲碁に興味があり、棋聖戦観戦、被災地・障害者支援にも関心をお持ちで都合のつく方は、どうぞ木谷さんのHPにあるチラシをお読みください。そこからお申込みできます。HP→http://kokorono-uta.net/kokorono-uta/
ここの、井山さんと一力さんの似顔絵チラシの下にある「チラシ表」「チラシ裏」「観戦バスツアー(盛岡、仙台、東京から)」という箇所をそれぞれクリックされると、詳細が読めます。

ただ、高次脳機能障害の方は夫もそうですが、記憶障害がありますので、バスの集合時間を忘れられたり、その日ツアーがあることも忘れられたり、目的も忘れられたり(バスに乗られてからなら問題ありません)、寒いところですので体調を崩されたり(これが一番心配)、色々心配ごとがあります。
どうぞ参加される時は、ご家族など介助者とお申込み下さるようお願いします。

コウジさんだって、1人で行かせたら絶対集合場所に辿り着けず迷子になるでしょうし、休憩所でバスから一旦降りたら、乗ってきたバスがどれだかわからなくなるでしょうし、体のバランスが少々悪いので、雪道で転倒して頭を打ったら大変。知らない方ばかりの中で心細さから体調崩すかもしれないし、静かにしなくてはいけない場で、つい大声をあげてしまうかもしれません。
心配しているときりがありませんが、コウジさんは行かないので安心です。
でも、どうか高次脳機能障害当事者の方のお申込みには、必ずサポートできる同伴者もお申込み下さるよう、お金が2倍になって恐縮ですがお願いします。

以上、お知らせでした。

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