週間碁2018.4.2飯塚先生


飯塚あい先生のお名前は、1年以上前に知りました。大森の「高次脳機能障害と囲碁の会」が昨年2月にスタートする時に、会主宰者の木谷正道さんから教わりました。
いつかお会いできたらいいな、と思っていたところ、4月1日のその大森の会で講演をして下さることになったと知り、すごく楽しみにしていました。ほかにも楽しみにしていた方が多かったようで、いつもは30名ほどの会なのに、今回は50名を越したようです。

たまたまちょうど、『週刊碁』という日本棋院発行の新聞の4月2日号で、飯塚先生の記事が大きく掲載されましたので、それを参考に飯塚先生をご紹介しますと・・・

飯塚先生は中学1年生の時に囲碁を覚えられ、2年生で院生(プロを目指す人)になったそうです。すごい早さですね。けれど院生になると、プロになるのは本当に大変だということがわかり、高校1年で院生をやめられたとのこと。そして医学の道を目指し始められ、大学は医学部に入られたそうです。それもすごいです。
大学でも医学生向けの大会をたちあげるほど、囲碁好きはとまらず、囲碁にかかわる研究がしたい、とずっと思っていらしたそうです。

現在は、東京都健康長寿医療センター研究所で、社会参加と地域保健研究チームに所属されながら、慶応義塾大学医学研究系専攻博士課程にも在学されています。

今回、囲碁が認知機能低下を抑制する効果があるという飯塚先生の論文が、アメリカの認知症関係を扱う学術雑誌 「American Journal of Alzheimer's Disease & other Dementias」に掲載されました(2018年1月)。論文タイトルは、「Pilot Randomized Controlled Trial of the GO Game Intervention on Congnitive Function (囲碁の認知機能に対する効果:パイロット研究)」です。

囲碁と認知機能との関係を論じた研究は、あまり私は知らないのですが、ネットで検索すると、10年ほど前に東北大学の川島隆太教授が、子どもを対象として研究をされているようです。飯塚先生によると、ほかにもあるようですが、特に日本ではそんなにないのではないでしょうか。ですからとても画期的なご研究といえます。

飯塚先生は、「認知症に特効薬はありません。運動、社会的交流 (人と会話するなど)、知的活動の3つが非薬物治療の3本柱です。」と言われました。歌や楽器演奏、読書なども、そういう活動に含まれるけれど、なぜ囲碁がいいのか、それは飯塚先生のご推測であり、それを立証する研究をされているのだそうです。

飯塚先生は施設に入所されている軽度~中程度の認知症の方々 (平均年齢89歳) を対象にテストされ、2年以上かけて研究された結果、ワーキングメモリ (複雑な情報を保持・処理し、対処する能力) と注意機能 (物事に集中したり、多くの情報のうち重要な情報に注意を向ける能力) が維持・向上する可能性があるというデータを得られたそうです。また、認知機能が低下していても、囲碁の基本ルールの理解が可能であったそうです (飯塚先生の資料より抜粋)。 ・・・囲碁はルールが簡単で、「19路盤で碁を打つのが難しくても、9路盤をつかって石取りゲームでも楽しむことができ、難易度の調整が可能なので幅広い人に適用することができます」ということですからね (『週刊碁』より抜粋)。

・・・そうなんです。大森の会では、19路盤もありますが (せっかくなので、視覚障害者用のアイゴを使っています。)、6路盤と9路盤が表裏になっている軽い板切れのような碁盤を使っています。私もその軽い碁盤と小さなビニル袋に入れた黒石と白石を両手に持って、誰か打ってくれる人いるかな、と部屋の中をふらふらうろついては、相手を見つけて打ってもらっています。初めて会にいらした、全く囲碁を知らない人たちも、その小さな碁盤なら気軽に打ち始められるので、好評です。ちなみにその小碁盤は、社会福祉法人進和学園の、通所授産施設「サンメッセしんわ」の利用者の方たちが廃材を再利用して作られています。

難易度の調整というなら、囲碁の場合、「置石」ができます。強い人と打つ時は、あらかじめ自分は9つでも5つでも石を置かせてもらい、そこからスタートします。断然有利ですし、どこから打っていいか迷う時も、置石があると打ちやすくなります。そういうことを飯塚先生は仰っているのです。

ただ、今回囲碁が認知機能低下抑制に効果があるという結果は出たけれど、それが囲碁のおかげだと断言するには1つだけ欠点があるのだそうです。 それはつまり、囲碁をするときにスタッフの人たちが「いいお天気ですね。」などおしゃべりするので、そういう会話が、今回の効果に影響を与えている可能性もあるとのこと。そこが、今後のご研究の課題の1つのようです。

飯塚先生はほかにも、ALS患者が目の動きだけで囲碁を打つことができて、患者が喜ばれた話や、手がよく動かない人が、かすかな筋力でパソコンを操作するスイッチによって囲碁を打つことができた話など、機械によってが障害や病気を持つ人が囲碁を楽しめる実例を紹介してくれました。

つまり、囲碁は全ての人の生き甲斐になり、生涯続けられ、人と一緒に楽しめることなのです、とお話を締めくくられました。

素晴らしいお話でした。私とコウジさんが囲碁を始めて良かった!と改めて思えました。
飯塚先生はまだ30歳になりたての、とても可愛らしく、明るく、元気で、優しく、気さくな元院生の医師、という珍しく貴重な存在です。これからも飯塚先生のご研究とご活躍を、大いに期待しております。

添付写真は、「週刊碁」の飯塚先生の記事。 拡大したら読めるかなあ・・・。