日々コウジ中

日々コウジ中 - クモ膜下出血により、さまざまな脳の機能不全を抱える“高次脳機能障害”になったコウジさんを支える家族の泣き笑いの日々

2019年07月

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今日は、最近読んだ本を紹介したいと思います。

『お母さんのこと忘れたらごめんね』(星雲社)という本で、作者は石崎泰子さん。
娘の美香さんが27歳の時、抗NMDA受容体脳炎という病気にかかり、その後遺症として高次脳機能障害が残ったそうです。

抗NMDA受容体脳炎という病気を、皆さんはご存知ですか?私はこの本を読むまで知りませんでしたが、アメリカではスザンナ・キャハランさんという女性が罹患して闘病記『脳に住む魔物』(Brain on Fire)を出版、ベストセラーになっているそうです。

お母さんの泰子さんが、非常に細かく日記をつけいていることに驚かされます。
美香さんの様子が変になった最初から、病名が判明し、障害が残ったことがわかるまでの流れがとてもわかりやすく、美香さんと同じ症状を感じている人やその家族にとっては、これを読めば早期発見に結び付くと思います。そのためにも、今症状を訴えている女性だけでなく、現時点で健康な全ての人が読んでおくといいと思いました。

この病気が研究され始めたのはごく最近ですが、もしもっと前から知られている病気だったなら、あの映画「エクソシスト」の主人公となったモデルも、この病気だったのではないか、と言われているようです。

そもそもこの病気は、卵巣にできる腫瘍に原因があるというのも不思議です。卵巣の腫瘍がなぜ脳の病気の原因なのか。けれどこの病気の患者の卵巣を調べると、高い確率で腫瘍があるとのこと。その腫瘍を取り除けばぐっと改善に向かい、スザンナ・キャハランさんのようにニューヨークタイムズの記者に復職できるまで回復する人もいるようです。
美香さんも、今は障害者枠で仕事されているとのこと。

読んでいて思ったのは、まず、味方となって一緒に、あるいはそれ以上に動いてくれるご主人や妹さんがいて良かったということ。そして、信頼できる医師に出会えたことが良かったです。勿論そのためには泰子さんとご主人が必死にこの病気のこと、治してくれそうな医師を探し回ったおかげです。

なにしろ、家族が何も動かなければ、そのまま患者さんは意識を戻さなかったかもしれないのですから。亡くなる方だって少なくない、危険な病気なんです。

自宅のある茨城県から、その病院(相模原市にある北里大学病院)へ行くのに、片道4時間もかかるのは、面会に行く泰子さんにとっては、非常に大変な労力だったと思います。でも主治医の飯塚医師は、「毎日来る必要はない」と諭してくれたので、週2回の面会にして体力温存できたとのこと。家族にはっきり賢明な指示をされる医師の存在は、心強いです。

(しかも読まれるとわかりますが、巻末に飯塚医師がこの病気についてや、美香さんの治療経過について、細かく記して下さっています。本当に、素晴らしい先生ですね。また、同じ巻末に、高次脳機能障害のことも詳しく説明されていて、画期的な本です。)

9か月もの長きにわたって意識不明だったとはいえ、その後の様子はページを追うにつれ、(この美香さんは治って、最後は以前の彼女に戻った、という話なのだろう。)と勘違いしそうなくらいでした。けれどドライヤーにこだわり出すなど、高次脳機能障害症状が現れてきて初めて、(ああ、そうだった。これは高次脳機能障害になった女性についての本なんだった。)、と思い出しました。

・・・美香さんは、国リハ(国立リハビリテーションセンター)で、「高次脳機能障害」と診断されます。

内容はそれこそ大変なんですが、とても読みやすく思えたのは、作者の泰子さんがとても自然体で書かれているからだと思います。

たとえば泰子さんが、美香さんの手術の日が義母の誕生日だったり、自分の誕生日だったりすると、「成功するに違いない」、と思われたりするところなんか、(そういうことって、あるある!)と共感し、ほほえましく思います。 
また、母娘で一緒にお風呂に入ったり、両親と川の字で寝たり、子どものようになってしまった娘さんの描写も、高次脳機能障害者家族なら経験あったり、今もそうだったり。

美香さんが勤め出してからも、母親(泰子さん)や父親が会社へ送っていくなど、美香さんの世話に甲斐甲斐しく手を出していらっしゃるのも、(あるある!)です。
つい先日の参議院議員選挙投票日のコウジさんのことを書いた私のブログも、まさにそういうことですよね。

私は情報のアンテナが低かったようで、泰子さん(と美香さんも?)がNHKに出られたのは存じ上げませんでした。
また、この病気を取り扱った、「8年越しの花嫁」という本や映画もあるそうです(それも存じませんでした。汗)。

とにかく是非皆様、この本をお読み下さい。
特に若い女性の方、家族に若い女性がいらっしゃる方は、知識として持っているべきといえます。







れいわ新選組の議員、ふなごやすひこさんと、木村英子さんは、現在「重度訪問介護」制度を利用し、24時間体制で介助をつけてらっしゃいます。自己負担は最大1割です。

けれど、2013年に施行された障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」での「移動支援」は、買い物や投票など、日常的、または社会的な活動に目的が限定されているとのこと。また、2006年に厚労省が出した告示では、「通勤や営業活動などの経済活動にかかる外出」は対象外と定めているそうです。個人の経済活動に公費を出すことはそぐわない、という理屈だとのこと。
そして国会議員としての移動は、その目的に該当せず、サービスが打ち切られる恐れがある、ということなんです(東京新聞7月30日より)。

もし登院や国会内の移動など、議員活動中の介助が「重度訪問介護での移動支援」の対象外で全額負担になる、となれば、1月にかかるお金が莫大になるそうです。そこで木村さんはそれを公費負担にしてくれるよう求めていました。このままでは、8月1日召集の臨時国会に登院できる状態にない、と。

ただでさえ健常な議員に比べて移動や発言、体力などで不利なお2人なのですから、ここは「合理的配慮」で今までと同じ負担額で議員活動をして頂きたいですし、そのほかにも配慮が必要となることには、それ相応の対応を参議院や国にはしてほしい。

現在、障害者が企業に勤める場合も、その企業企業で、移動支援の費用を負担したりしなかったりだそうですが、自分が勤めたい企業が負担してくれない企業だった場合、障害者が全額負担することになります。それでは、「それは無理!」、とほとんどの障害者がその企業で働くことを諦めるでしょう。つまり職業選択の自由がそこで侵害されているので、今回重度障害者が国会議員になったことを良いきっかけとし、「移動支援」の範囲をもっと広げて公費で負担する仕組みにしたらいいと思います。

・・・と思っていましたら、さきほど知りましたが、当面は参議院がお2人の国会での介助費を負担することにしたそうです。ということは、「全額」を負担する、ということなのだと思いますが、それでは莫大なお金になってしまいますので、ここはやはり木村さんが求めているように、「公費負担」にすべきだと思います。

さて、今日は2つお知らせがあります。(1つ1つが少々長い文です。)
●1つめは、令和元年度 障害者を対象とする東京都職員採用選考(3類)のご案内です。
※「採用選考案内」(7月19日配布開始)を必ず参照してください。

◆必要な資格
身体障害者手帳の交付を受けている方
都道府県知事又は政令指定都市市長が発行する療育手帳の交付を受けている方
児童相談所等により知的障害者であると判定された方
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方

◆日程
受付について 
インターネット:7月19日(金)午前10時から8月7日(水)午後3時まで(受信有効)
郵送(簡易書留):7月19日(金)から8月5日(月)(消印有効)
※窓口での受け付けはしていません

試験日など
第一次選考:9月8日(日)
受験票発行:8月27日(火)
合格発表:9月27日(火)
第二次選考:10月9日から10月11日までの間で指定する1日
最終合格発表:11月6日(水)午前10時

職種:事務で45名採用
制限:学歴を問わず、昭和55年4月2日から平成14年4月1日までに生まれた人
詳しいお問い合わせ先:東京都人事委員会事務局 試験部 試験課
tel:03-5320-6952~4
email:S9000049(at)section.metro.tokyo.jp
※(at)を@に変えて送信してください

●2つ目は、東京都高次脳機能障害リハビリテーション講習会です。(日本損害保険協会助成)
日時:8月31日(土) 13時~16時半(受付12時半~)
会場:国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟1階小ホール (渋谷区代々木神園町3-1 小田急線参宮橋駅 徒歩7分)
参加料:無料
定員:384名(定員に達し次第、締め切ります。)

プログラム
開会 13時~
委員長挨拶:渡邉修氏(東京慈恵医科大学附属第三病院リハビリテーション科診療部長/教授/医師)
来賓挨拶:小池百合子氏(東京都知事)(予定)

第1部 13時15分~13時55分
〈基調講演〉
「発達障害と高次脳機能障害~今、どのような支援が必要なのか~」
講師:橋本圭司氏(国立成育医療研究センターリハビリテーション科医師/はしもとクリニック経堂院長)

第2部 14時05分~15時15分
〈高次脳機能障害の回復を促す~地域支援報告〉
座長:渡邉修氏
①NPO法人VIVID(ヴィヴィ)のミニデイサービスより・・・「リーディング劇」
出演者:大塚みどり氏(NPO法人VIVID支援員)及びミニディサービスの当事者の方々

②NPO法人調布ドリームより・・・「高次脳機能障害の回復を促すグループリハビリ」
講師:﨑山美和氏(NPO法人高次脳機能障がい者活動センター調布ドリームサービス管理責任者)
③レジリエンスより・・・「高次脳機能障害のある方の就労(復職)支援」
講師:蟹江幸二氏(就労支援以降事業所レジリエンス(国立市)所長)

第3部 15時25分~16時25分
〈体験談と歌〉
「交通事故による記憶障害を乗り越えて~再び歌う喜び」
歌手:芹洋子氏(四季の歌・あざみの歌・忘れな草をあなたに・他)

閉会 16時30分

お申込み方法
7月1日(月)~8月15日(木)
メールで、下記アドレスに下記内容で申し込んで下さい。申し込んで受講がOKの返信メールの画面、またはそれをプリントアウトした紙が受講証となります。当日、受付に御提示ください。

申込みメール送信先: tokyobrainreha@gmail.com

個人→ ①氏名(ふりがな)・性別 ②〒・住所(建物名も)③電話 ④勤務先 ⑤お立場(当事者、家族、行政、医療、福祉、支援団体、他)

団体→ ①勤務先(所属先)名・部署名・代表者名 ②勤務先(所属先)の〒・住所(建物名も) ③電話 ④参加者「全員」の氏名(ふりがな)・性別 ⑤各々のお立場(当事者、家族、行政、医療、福祉、支援団体 他)

主催:東京都高次脳機能障害リハビリテーション講習会実行委員会
事務局→ 港区南青山4-9-20 電話03-3408-3798

それではまた。

関東も梅雨明けしました。ものすごい暑さです。皆さん熱中症にならないよう、お気を付けください。

前回のブログでお知らせした、村上浩康監督の「東京干潟」が、このたび大阪で行われた門真国際映画祭のドキュメンタリー部門で最優秀作品賞を受賞したとのこと、おめでとうございます!
本当に面白い映画ですから、日本中で上映されて、多くの方が見られるといいですね。
感動し、しみじみし、最後はやはり「このまま日本はどうなっていくのか?」と心配になり考えさせられる映画です。そして、多摩川で暮らすホームレスのおじさん、猫たちへも思いを馳せて頂きたいです。

村上監督同様、多摩川の猫たち(とその猫たちのお世話をしている、ホームレスさんたち)の生活を援助していらっしゃる写真家の小西修さんの写真展と、その小西さんの活動を援助していらっしゃる漫画家のますむらひろしさんの複製原画展が、JR新宿駅東口を出たところにある飲食店「ベルク」で開催されています。(私の7月10日のブログ参照。) でも、それもあと2日、7月31日で終了します。

是非そばを通られる方はお立ち寄り下さって、ますむらひろしさんの絵や小西修さんの写真をご覧になって、できればますむらひろしさんの複製原画をお買い求め頂けますよう、お願いします。A4サイズが1枚3千円、A3サイズが1枚5千円で、全ての売り上げが、「たま猫基金」となって、小西さんの活動資金になるんです。

私も「えんとこの歌」(伊勢監督)を見た7月14日の帰りに寄って、少なくて申し訳ないですが、A4を3枚買いました。届くのが楽しみです!

それにしても、この厳しい暑さの中、多摩川河川敷にいる猫たちは、可哀想です。ホームレスさんの元に辿り着けている猫たちならまだしも(それでもクーラーはないからすごく暑いですが)、1人ぼっち(1匹ぼっち)で草むらかどこかで暑さに耐えていることを思うと、胸が痛み、そういう猫たちを捨てた人間の身勝手に腹が立って仕方ありません。かけがえのない小さな命と、きちんと最後まで一緒に過ごして下さいよ。お願いします。そして犬猫殺処分もこの日本、世界から無くなりますように。犬猫は人間の友達です、家族です。犬猫だけでなく、鳥も象もジュゴンも、牛も馬も豚も・・・本当は生きもの全て友達です。
(この間テレビを見ていたら、マナティが人間から哺乳瓶でミルクをもらっている映像が写って、かわいかったな~。人懐っこいんですね。)

ここ1か月ほどコピー機や2台のパソコンの調子がすこぶる悪く、この週末はワッチにも頼んでその2つの買い替えやら設定やらに終始しました。1日中、2台の古いパソコンと1台の新しいコピー機相手に奮闘していたので、ブログも書けず、急用でない限りメールにも返事する時間がない有様でした。

パソコンやコピー機が使えないと、こんなにも不便だなんて。つい30年前にはパソコンやコピー機、携帯電話すら身近にない生活でしたが、不便を感じずなんとかやっていたのに。よく思い出すのは、1990年頃、「あ~あ、トランシーバーがあったら便利だなあ。あそこにいる少し離れた人と会話ができるのに。買おうかなあ。」なんて思ったことです。
トランシーバーは通話できる距離に制限がある(数百メートルくらいまでは通話できる?)ので、携帯電話のある今は欲しくはありませんが、今でも場によっては使われているようですね。

話を戻して、昨日も一向に1台のパソコンのWindows のメールが使えなくて、あれこれ試して四苦八苦、もう諦めてケーブル会社に電話して来てもらう予約をしようとしたら、ずっと関わりたくなさげに横目でこっちを見ていたワッチが、しびれを切らしてくれ、「Gメール使えばいいじゃん。」と言います。
ワッチに「Gメールってなあに?」と聞くと、「グーグルだよ!何回も言ってるじゃん!」と怒られました。そういえば、言われていたような・・・ でも、もうおばさんは新しい機械関係のこと、覚えたくないよ。とはいえ、必要だから仕方なく覚えるよ。トホホ。
ワッチは「やってあげるよ、もう。」とため息をつきながらこっちへやってきました。やっほ~!

家に若い子が1人いてくれて、助かること助かること。わからないことはワッチに聞いて即解決。ワッチは「もう!家にいると、こういうことばかりやらされて終わっちゃう。」とぼやいていますが、意外と優しいワッチ、勉強に忙しい中、せっせとやってくれるんです。サンキュ!
というわけで、Gメールを作ってくれ、コピー機とパソコンを繋げてくれただけでなく、コピー機で印刷すればするだけポイントが溜まるという、「プリント枚ル」サービスの登録まで済ませてくれました。有難や~。おかげで、安心した私はこうして数日ぶりにブログ書きにやってこられたのでした。

8月1日から始まる国会に備え、議場ではれいわ新選組のふなとやすひこさんと、木村英子さんの車椅子が入れるよう、工事中だというニュースが、テレビでも新聞でも持ちきりです。わくわくしますね。こうして障害者の代表として議場だけでなく、全議員の頭の中もバリアフリー化を進めていかれるようご活躍下さることを期待しています。

それでも朝起きた時、昼間でも、1日中考えるのが、京都アニメーションの放火事件です。
犠牲になられたのは20~30歳代の方が多いとのことで、まだまだこれからなのに、と悔しくてなりません。犯人の男を怒鳴りつけてやりたくて仕方ありません。凶行に至った彼の気持ちが、今得ている報道からは、全くわかりません。彼には友達や彼女がいなかったのでしょうか。いたら「それはやってはいけないことでしょ。」と止めることができたかもしれないのに。
孤立している人がいたら、周りは声掛けする必要があるんじゃないか、と思います。さもないと、今後も今回のような大参事が起きてしまうことがあるかもしれない。勿論、相手が凶暴だったり心病んでいたりして、声かけづらいかもしれないけれど、でも放置していいとはやはり思えず・・・。
亡くなられた35名の方のご冥福を祈るとともに、今なお病院で治療を受けていらっしゃる方々の回復を願います。

最後に、今週末の8月3日(土)は、松山講演です。
是非おいで下さい。
チラシ写真を添付します。

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今日は、ポレポレ東中野で上映されている、『東京干潟』を見てきました。
https://www.mmjp.or.jp/pole2/

いやあ、面白かったなあ!
日本の歴史や今の日本が抱えている問題がわかる、生き物への慈しみが描かれている、人と人、人と猫や鳥(動物)が支え合っていることがわかる、実に魅力的なホームレスさんが実直に懸命に生きていらっしゃるのがわかる、それらを包み込む監督の温かいまなざしが感じられる、そんな映画です。

この映画館は、いつも良質の映画を上映しているな、と思っていましたが、行ったのは今日が初めてです。東中野駅前にあります。

映画を見ての感想・・・といいますか、見ながら既に「知らなかった!」「すごい!」「ワクワクする!」「胸にくる!」と思っていました。だから終わってしまった時、「終わっちゃった。もっともっと見続けたかった。」と残念でした。しかし考えてみますと、架空の話を描くドラマは、ハッピーエンドなりの結論が一応あります。でもドキュメンタリーって、現実は進行形なのですから、終わりってないのですよね。だから、あのあとおじさんはどうしているのかな、干潟の工事はさらに進んでしまっているのだろうか、かわいい目をした鳶はどうしているのかな、なんて気になって気になって・・・干潟に様子を見に行こうかしら、とかまで思ってしまう。

なにを「知らなかった」かといいますと、多摩川河口にこんな干潟があること。しじみが採れ、しじみ狩りに来ている人たちが結構いること。東京オリンピックを控え、橋が架け替えられる大工事が進んでいること。そのために貴重な干潟が掘削され、大量のしじみも掘られた土と一緒に連れ去られていくこと(涙)。干潟の泥に足を取られ、身動きできなくなることもあること。こんな河口にホテルも建設されていること・・・などなど。

「すごい」のは、ホームレスのおじさんが、ちゃんと採るしじみの大きさを考えていること。あまり小さいのを取ると、育たなくてしじみがいなくなってしまうからだそう。大きなしじみは、「あとは卵を産んで死ぬだけだから。」なんだそうです。(え?しじみ(貝)は、卵を産むんだ!)、とそこにも驚く私でした。(生まれた時から貝かと思ってました。)

でもそのしじみも、小さなしじみも根こそぎ持って行ってしまう漁師の漁の仕方や、オリンピックのための工事によって、激減しているとのこと。おじさんの収入も激減してしまいます。ということは、おじさんが世話している猫も、お腹をすかせてしまいます。そしておじさんは、そのこと(猫がお腹をすかせていること)が狂ってしまうくらい嫌だそうです。

私はその気持ちがすごくわかるので、うんうん、とその場面で頷いていました。犬のウメ、猫のハルとチーがごはんを待ってみんなで私を見上げている時、(早くあげなくちゃ。)とすごく焦り、焦るあまり色々ミス(物につまづいて足の指を痛め、激痛で飛び上がったり、料理を焦がしたり)しますから。

おじさんの人生も描かれています。なんとおじさんは、大牟田の炭鉱の町生まれだそう。有明海の干潟で貝を掘ったこともあるので、その経験が今に生きているそう。父親は沖縄の有力者で、父を追って沖縄へ行き米軍基地の憲兵として働いた後、大阪で大手建設会社に勤務後独立。片目を怪我をして失明したけれど労災は申請せず(申請すると、次からその会社からは仕事がもらえなくなるからだそう)、でも目のこともあり仕事を辞め、今は猫15匹以上と河川敷で暮らし、「この暮らしが楽しい。」と言います。

もっとも、おじさんを頼りにしている猫達がいなければ、ここに居続けることはなかったようで、「こいつらがいるから仕方ないんだよ。」と諦め顔ながらも嬉しそうに、猫達をとても可愛がっているのがわかりました。過去には、目がまだ開かない子猫5匹が、捨てられていたこともあるそう。捨てる人間の無責任さに怒りながらも、「こいつらにも、生きる権利があるんだもの。」と甲斐甲斐しく世話をし、避妊手術もされる。おじさんには、猫世話するボランティアの人たちと交流があるようで、少し安心しました。

けれど自分が食べるものより、猫のエサを優先されていましたし、猫とおじさんの双方が相手を必要とし、頼り合っている姿が印象的でした。私もウメやハル、チーに助けられていますから、いたく共感しました。

この映画は、奥が深く、幅も広い優れた作品です。ドキュメンタリーだからこそ、今日本で起こっている様々な問題が説得力とともに、見る人に迫ってきます。見ながら、(やっぱり映画はドキュメンタリーだよね。嘘がない。真実しかない。)と思っていました。

・・・う~ん・・・私があれこれいくら細かく下手な説明をしましても、実際にご覧にならないと干潟の空気感、おじさんの魅力、自然破壊の脅威と不気味さ、猫のふわふわ感と鋭い眼差しと愛らしさ、台風の怖さ、その他もろもろは伝え切れません。やはり是非見に行かれて下さい。
それに、「おじさん」「おじさん」と書いていますが、驚くなかれ、お年は85歳だそうですよ。筋肉モリモリの屈強な体をされていて全然そう見えないので、「おじいさん」ではなく「おじさん」としました。

また、監督の村上さんがいいです。ホームレスのおじさんと同じ目線で考え、感じています。
しじみ採りのシーンなど、村上監督も同じような服装(調べると、ウェーダーというものらしいです)をしないと撮れないだろうなあ、と思って、映画のあと監督に聞きますと、やはりそうでした。
最初は、並行して撮影されていた『蟹の惑星』のために、カニばかり撮ってらしたそうですから、まさか自分がそんな恰好をすることになるとは、思わなかったでしょう。

蟹の映画と、しじみ採りのおじさんの映画をミックスして1つの映画にする予定だったものの、それぞれが余りにも広がりのある内容となったため、別個の映画として発表されたそうです。
そのエピソードを聞くだけでも、そんなに伝えたいことがそれぞれある映画なんだ、見てみたいな、と思いませんか?
私は今回『東京干潟』を見てきましたが、『蟹の惑星』も見たいと思っています。

映画館では、カニが脱皮したあとの皮も展示してありますよ。私はそれは蟹の標本かと思って見たのですが、皮だそうです。びっくりだなあ。たまたま今日も脱皮したばかりの蟹がいて(蟹は何匹か展示されています)、村上さんは興奮して「ほらほら、見て見て、脱皮したばかりですよ。」とその蟹と皮を指さしていました。なんだか子どものような村上監督が微笑ましく(失礼)、生き物大好きな私はとても共感したのでした。

帰宅してコウジさんにパンフレットを見せながら、映画の説明をしますと、「あ~あ、行きたかったな。」と口を尖らせます。大丈夫、上映期間が好評につき8月23日まで延長となりましたので、今度こそコウジさんを連れて行ってきましょう。
ちょうどお子さんたちも夏休みですから、自由研究のアイデアをもらえるかも? 

また、アンコール上映(上映延長)の決定を受け、ポレポレ東中野では、村上浩康監督特集上映も開催することになったそうです。(『流 ながれ』、『無名碑 MONUMENT』、『小さな学校』)
詳しい上映スケジュールは、冒頭のHPをご覧下さい。

ということで、最後は映画看板前の村上監督です。素敵な笑顔がいいですね!

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劇場で売っていた村上監督の別の映画、『流 ながれ』のDVDも買ってきました。
DVDの売上などは、なんと映画に出てきたおじさんの猫のエサ代としてカンパになるそうです。
嬉しいですね!有難うございます!皆さんも、どうぞご協力ください。

温かな心の村上さんの、すっかりファンになりました。

相模原市の津久井やまゆり園で起きた、障害者殺傷事件から、もうすぐ3年になります。
事件は26日未明に起き、19名もの障害者が亡くなりました。
植松被告の公判は、来年1月から始まります。

各地でこの事件に関する催しがあります。

●明日のNHKEテレでは、特集番組があります。

7月25日(木)夜8時~ ・ 再放送は7月28日(日)零時~ (土曜深夜)
NHKEテレ バリバラ「障害者殺傷事件3年 まちで暮らす」

~NHKのHPより~
障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で多数の入所者が殺傷された事件から3年。
今回は“暮らしの場”を検証する!言葉による意思の疎通が難しく自傷などの行動障害がある
重度知的障害者は、これまで親元か施設で暮らすしかないと考えられてきた。
しかし今、ヘルパー制度を利用し地域での暮らしを目指す人たちが出始めている。
施設を出てまち中で暮らす準備を始めた事件の被害者を取材。“当たり前の暮らし”って、何だ?

番組内では、このブログでもお馴染みの、宍戸大裕監督の映画『道草』が紹介されるそうです。

●先日もお知らせしましたが、7月28日(日)に相模原市の橋本ソレイユさがみにて、「津久井やまゆり園事件を考え続ける・対話集会Ⅱ」が14時からあります。

7月28日(日)14時~17時半(開場13時半)
場所:ソレイユさがみミーティングルーム1(JR・京王線橋本駅北口前イオン6階)
   
<プログラム>
1.はじめに ~二人の映画監督は語る~(一部上映含む各30分 計60分)
  伊藤真一監督「やさしくなーに」/大河原明子監督「げんちゃんの記録」
2.そして母たちは語る ~シンポジウム~(シンポジスト各20分 コーディネーター各10分 計90分)
  和己君の母親 平野由香美さん/奈緒ちゃんの母親 西村信子さん
  げんちゃんの母親 福井 恵さん
  コーディネーター 浅野史郎さん(元宮城県知事 現神奈川大学教授)
休憩10分
3.全体討論(30分)

定員:180名
主催:津久井やまゆり園事件を考え続ける会
資料代:500円
お申込み:080-5494-3439(杉浦さん)、sugi808@infoseek.jp ※なるべくメールにてお申込み下さいとのこと。

・・・伊勢真一監督は、「えんとこの歌」の監督です。映画は、今のところ以下のところで上映です。
・新宿K's cinema   ~7月26日(金)連日10時より
・横浜シネマ ジャック&ベティ ~8月2日(金)連日11時10分より
・名古屋・名演小劇場  ~7月26日(金)12時35分より
・広島・八丁座  7月19日(金)~7月25日(木)10時25分より
         7月26日(金)~8月1日(木)16時50分より
・大阪・シアターセブン  7月27日(土)~8月2日(金)12時10分より
             8月3日(土)~8月9日(金)14時50分より
             8月10日(土)~8月16日(金)時間未定
8月には静岡、京都、伊勢のミニシアターで上映が始まります。

以上、お知らせでした。

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