今日は、最近読んだ本を紹介したいと思います。
『お母さんのこと忘れたらごめんね』(星雲社)という本で、作者は石崎泰子さん。
娘の美香さんが27歳の時、抗NMDA受容体脳炎という病気にかかり、その後遺症として高次脳機能障害が残ったそうです。
抗NMDA受容体脳炎という病気を、皆さんはご存知ですか?私はこの本を読むまで知りませんでしたが、アメリカではスザンナ・キャハランさんという女性が罹患して闘病記『脳に住む魔物』(Brain on Fire)を出版、ベストセラーになっているそうです。
お母さんの泰子さんが、非常に細かく日記をつけいていることに驚かされます。
美香さんの様子が変になった最初から、病名が判明し、障害が残ったことがわかるまでの流れがとてもわかりやすく、美香さんと同じ症状を感じている人やその家族にとっては、これを読めば早期発見に結び付くと思います。そのためにも、今症状を訴えている女性だけでなく、現時点で健康な全ての人が読んでおくといいと思いました。
この病気が研究され始めたのはごく最近ですが、もしもっと前から知られている病気だったなら、あの映画「エクソシスト」の主人公となったモデルも、この病気だったのではないか、と言われているようです。
そもそもこの病気は、卵巣にできる腫瘍に原因があるというのも不思議です。卵巣の腫瘍がなぜ脳の病気の原因なのか。けれどこの病気の患者の卵巣を調べると、高い確率で腫瘍があるとのこと。その腫瘍を取り除けばぐっと改善に向かい、スザンナ・キャハランさんのようにニューヨークタイムズの記者に復職できるまで回復する人もいるようです。
美香さんも、今は障害者枠で仕事されているとのこと。
読んでいて思ったのは、まず、味方となって一緒に、あるいはそれ以上に動いてくれるご主人や妹さんがいて良かったということ。そして、信頼できる医師に出会えたことが良かったです。勿論そのためには泰子さんとご主人が必死にこの病気のこと、治してくれそうな医師を探し回ったおかげです。
なにしろ、家族が何も動かなければ、そのまま患者さんは意識を戻さなかったかもしれないのですから。亡くなる方だって少なくない、危険な病気なんです。
自宅のある茨城県から、その病院(相模原市にある北里大学病院)へ行くのに、片道4時間もかかるのは、面会に行く泰子さんにとっては、非常に大変な労力だったと思います。でも主治医の飯塚医師は、「毎日来る必要はない」と諭してくれたので、週2回の面会にして体力温存できたとのこと。家族にはっきり賢明な指示をされる医師の存在は、心強いです。
(しかも読まれるとわかりますが、巻末に飯塚医師がこの病気についてや、美香さんの治療経過について、細かく記して下さっています。本当に、素晴らしい先生ですね。また、同じ巻末に、高次脳機能障害のことも詳しく説明されていて、画期的な本です。)
9か月もの長きにわたって意識不明だったとはいえ、その後の様子はページを追うにつれ、(この美香さんは治って、最後は以前の彼女に戻った、という話なのだろう。)と勘違いしそうなくらいでした。けれどドライヤーにこだわり出すなど、高次脳機能障害症状が現れてきて初めて、(ああ、そうだった。これは高次脳機能障害になった女性についての本なんだった。)、と思い出しました。
・・・美香さんは、国リハ(国立リハビリテーションセンター)で、「高次脳機能障害」と診断されます。
内容はそれこそ大変なんですが、とても読みやすく思えたのは、作者の泰子さんがとても自然体で書かれているからだと思います。
たとえば泰子さんが、美香さんの手術の日が義母の誕生日だったり、自分の誕生日だったりすると、「成功するに違いない」、と思われたりするところなんか、(そういうことって、あるある!)と共感し、ほほえましく思います。
また、母娘で一緒にお風呂に入ったり、両親と川の字で寝たり、子どものようになってしまった娘さんの描写も、高次脳機能障害者家族なら経験あったり、今もそうだったり。
美香さんが勤め出してからも、母親(泰子さん)や父親が会社へ送っていくなど、美香さんの世話に甲斐甲斐しく手を出していらっしゃるのも、(あるある!)です。
つい先日の参議院議員選挙投票日のコウジさんのことを書いた私のブログも、まさにそういうことですよね。
私は情報のアンテナが低かったようで、泰子さん(と美香さんも?)がNHKに出られたのは存じ上げませんでした。
また、この病気を取り扱った、「8年越しの花嫁」という本や映画もあるそうです(それも存じませんでした。汗)。
とにかく是非皆様、この本をお読み下さい。
特に若い女性の方、家族に若い女性がいらっしゃる方は、知識として持っているべきといえます。