三池炭鉱爆発事故による高次脳機能障害の話の途中ですが、またここで今日は別の話題です。
(三池のことはこれからも書き続けていこうと思っておりますので、このように時々中断しますが、ご了承ください。)

今日の話題は2つありまして、1つが高次脳機能障害者のパラリンピック、もう1つは高次脳機能障害への囲碁療法(4月1日)、その関連として大船渡市での囲碁まつり(5月12~14日)のお知らせです。ちょっと長くなりましたが、最後までお読み頂けると嬉しいです。

ピョンチャンパラリンピックが閉幕しました(コウジさんと同じ深谷市出身の村岡桃佳さんが、5つものメダルを取られました。すごい!)

テレビを見ていて改めて思ったのは、やはり手足を失われた、見た目でわかる障害をお持ちの方はすぐその大変さがわかります。ただ、麻痺がある、という方ですと一瞬普通の方のように見えますし、欠損や麻痺がない精神障害の方は尚更、その障害が見ている人にはわからないですね。

今回高次脳機能障害をお持ちの方が出場されたかは知らないのですが、先日京都でお会いした方の話では、精神障害だけではパラリンピックに出られないようでした。障害者としては同じなのに、身体障害の方しか出られないというのは? でも、たしかに精神障害だけの方に出場資格が与えられるとなると、どの程度の障害の重さなのか、とても判断や線引きが難しいし、嘘の申告をする方が出てくる可能性もありますね・・・。

私はたまたま、高次脳機能障害をお持ちで、2020年パラリンピック出場を目指されている方を2人、存じています。その1人は、常石勝義さん(乗馬)、もう一人は、反町公紀さん(陸上)。反町さんについては、「パラスポ!」という障がい者スポーツの情報サイトの中の、「君の一歩は、未来に向けて」というシリーズで現在5回まで連載されています。是非お読み下さい。http://paraspo.info/ 
反町さんは、中学1年生の時に交通事故に遭われ高次脳機能障害者となり、右麻痺や失語その他の症状があります。

常石さんは、元々騎手でいらっしゃいますが、2度の落馬事故により、高次脳機能障害を負われました。

常石さんが出場を目指されているのは、馬術という種目ですが、これは馬に決まったルートをいかにきれいに歩かせられるかを競う種目だそうです。けれど常石さんは記憶障害があるため、そのルートを覚えられないそうです。出場選手枠は人数が決まっていますから、ほかの記憶障害のない軽い身体障害の方がルートをきちんと覚えられるとすると、常石さんは覚えられないので、これからの選抜にとても不利なようでした。
これは、生命保険の高度障害の項目と同じですね。

手がなかったり足がなかったり、あるいは目が見えなかったり等の身体障害の方は高度障害と認められますが、身体障害のない精神障害の方は、そう認められるのがとても難しいです。社会生活を送りづらいのは、精神障害者でも同じなのですが。いえ、乙武さんのような、手足がなくてもピカピカの頭脳をお持ちで意思疎通に全く困難がなければ、教師の職に就かれたり本を書かれたり社会生活を送れるという素晴らしい見本を前にすると、夫を始めとする高次脳機能障害者は、周りが理解し支えないと働くことができないので、同じどころか、全然違うと思います。

記憶障害が重く、たった今自分がやっていたことをすぐ忘れたり、作話や勘違いも頻繁、しかも本人は作話したり勘違いしているという認識がなく、感情コントロールが難しく、幼稚化し、意欲も低いなど(悪いことばかり書いてすみません)、こういう方たちは1人できちんと仕事ができません。周りに適切なサポートがあれば、仕事ができますが、そのサポートがなかなか得づらく就労できる人がいまだ少ないのは、この障害への理解と支援が、雇用して下さる側にまだまだ不足しているからだなあ、と思っています。
わかりやすい身体障害者と、すぐその障害が見えづらい精神・知的障害者の間には、溝があるなあ、とよく思いますが、パラリンピックでも同じ問題があることを知りました。

繰り返しますが、常石さんには軽い左麻痺があるので、それで出場資格を得られるようですが、軽い麻痺のため、障害の重さで区分されて出場すると、軽い身体障害のみの方たちと一緒の出場になり、記憶障害が重い常石さんは、とても不利なんです。

京都で私と話していた時の常石さんは、とても朗らかでおしゃべりな好青年ですが、普通にペラペラと私と話している途中でいきなり、「すみません。あなたはどなたでしたっけ?」と言うのです。
「柴本礼ですよ。」とその都度答えていましたが、常石さんは私の名刺を目の前に置いてくれるよう頼むので、そうしました。常石さんは、「これを見ながら話せば、ああ、この人は柴本礼さんだ、と確認しながら話せます。」と安心されていました。

こんなに重い記憶障害をお持ちの常石さんが、麻痺のある体で馬をコントロールし、見事出場枠に入れることを祈りますし、出場されても、途中でルートを忘れないよう祈ります。いっそのこと、パラリンピックに高次脳機能障害者だけの枠があるといいのに、とさえ思いました。

2つ目の話題にいきます。
囲碁が高次脳機能障害症状の改善に良いのでは?と思い出して、私が夫をサポートすべく、近所の囲碁教室へ通い出してもうすぐ1年になります。
でも私が忙しくて、囲碁教室を休んでばかりなのと、家で夫に教える時間がないのと、あってもその時夫は、「囲碁?やだよ。もう目がしょぼしょぼして眠いんだから。」と言って寝てしまうので、いまいち効果がわからない1年でした。

でも昨日も私の実家へコウジさんを連れて行き、母と2局打ってもらいましたが、そばで見ていると、なかなかの腕前なんですよ、これが。どう考えても、元々コウジさんには囲碁センス、才能があるとしか思えません。1年間、休み休み囲碁教室へ行っている私より、1度も行かずに大森の月1回の囲碁と高次脳機能障害の集まり(木谷正道さん主宰)と、月数度の母との対局しかしないコウジさんの方が、パッパといいところに碁石を置いていくのです。一般的な話としても、囲碁に向いている人、向いていない人はあると思いますしね。
きっとコウジさんが私のかわりに囲碁教室へ行った方が、絶対上達は早いと確信しますが、「囲碁教室?毎週土曜日に決まった時間へ行かなくちゃいけない、というのは嫌だね。家でゴロゴロしていたい。」と申します。がくっ。

たしかに月~金障害者枠での仕事に頭をフル回転しているコウジさんは、平日は帰宅後ぐったりしていますから囲碁の勉強は無理、土日はゆっくり脳を休めたいというのもわかります。聞くところによると、高次脳機能障害者は程度にもよりますが、普通の人の8割?6割?の脳で生きているそうですから、そりゃあ疲れますよね(不確かな情報ですみません。とにかく脳に損傷を受けているので、普通の人と同じ生活をしていたら、脳が働かされ過ぎてすごく疲れるのです。それを易疲労性といいます)。

ところでその月1回の大森の囲碁の会に、このたび東京都健康長寿医療センターの研究員である飯塚あい先生(脳神経内科医)がいらしてご講演下さることになりました!そのお知らせです。

日時:4月1日(日)午前10時~10時半
場所:大田区障害者総合サポートセンター(さぽーとぴあ)5階。 大森駅からバス5分くらい、下車して徒歩3分くらい。
内容:「囲碁と認知症」飯塚あい先生(脳神経内科医・東京都健康長寿医療センター研究員)

飯塚あい先生がプロジェクト主幹として関わられた、日本初の本格的な臨床研究「囲碁療法プロジェクト」の結果、「囲碁の認知機能への介入効果に関する論文」がアメリカの認知症に関する学会誌「American journal of Alzheimer's and Other Dementias」に、昨年12月に掲載されたそうです。

そこには、
●囲碁の学習を行うことで、施設入居者の注意機能、全般的認知機能が維持・向上する可能性が示された。
●認知機能が低下していても、囲碁の基本ルールの理解が可能であり、プログラムを完遂することができた。
●施設で実施するプログラムとして、本プログラムは効果的かつ幅広い認知機能の人を対象に実施できる可能性がある。

とありますが、このご研究は、きっと高次脳機能障害者にもあてはまると思いませか?。
高次脳機能障害の囲碁療法にご関心があってご都合のつく方は、是非4月1日(日)10時までに、さぽーとぴあへいらして下さいね。もちろん私もコウジさんと参ります。

囲碁の会はいつも通り9時半から同室で始まっていますので、そちらもどなた様でもいらして下さい。手ぶらで結構です。囲碁ボランテイアの方々が教えて下さいます。13時半からは、心の唄コンサートが1時間ほどあります。(おにぎり2個とお茶、お菓子が出ますので、1人400円の会費を入口でお支払い下さいね。)

この大森の高次脳機能障害と囲碁の会を始められた木谷正道さんは、5年前から被災地支援として、岩手県大船渡市で囲碁まつりというものを開催してこられました。今回は5回目となり、日程が決まったそうですので、お知らせします。

【第5回 碁石海岸で囲碁まつり】
5月12日(土)~14日(月)
行きは8時48分東京発やまびこ43号で11時23分一関着後、貸し切りバスで大船渡市内の会場へ。
帰りは14時50分一関発やまびこ50号で17時24分東京着。宿泊は大船渡温泉。
参加棋士は王銘琬九段、信田成仁六段、岡田結美子六段、村上深元アマ本因坊・5月に行われる世界アマ日本代表。
費用は東京発の方は5万円から5万7千円ほど、一関発の方は3万2千円ほどだそうです(交通費・宿泊費、、前夕祭、津波伝承館、碁石海岸ツアーなど込み)。

(また詳細は追ってお知らせします。)

どれくらいの方が参加希望されるかわからないので、とりあえず希望される方は4月2日くらいまでに、コメントで連絡下さい(個人情報なので非公開にします)。正式申込は4月10日までのようです。私もやることが多くて、昨年は行きましたが今回は行けない、と今まで思っていましたが、検討中です。

宜しくお願いします。