うつ病九段


将棋の先崎学九段の 『うつ病九段』(文藝春秋)を読みました。

この本を教えて下さったのは、なんと将棋ならぬ囲碁の世界の方でした。 あとで知ったことですが、先崎学九段の奥様は、囲碁棋士の穂坂繭三段なんですね。 プロの将棋棋士と、同じくプロの囲碁棋士のご夫婦がいらっしゃるのは初めて知りました。

そして私がこの本に特に関心を抱いたのは、先崎学九段のお兄様が、高次脳機能障害界で (ほかの分野でも)超有名な、あの精神科医の先崎章先生だからです。

このブログを読まれている方の中にも、埼玉県総合リハビリテーションセンターで先崎章先生にお世話になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。あるいは、どこかの講演会で、先生のお話を聞いた方も多いのではないでしょうか。先生は、東京福祉大学でも教えられています。

私は先崎先生とは、4年前の大分講演の時にご一緒して以来、(穏やかで優しい先生だなあ。)とひそかにファンになっていましたが、この『うつ病九段』の中に出てくる先生は、その柔和なイメージが吹き飛ぶようなシャープな凄腕の医師として登場されています。実際そうなんだと思います。

不安で仕方ない弟さん(学九段)に、「必ず治ります。」という短いメールを送られる先崎先生によって、弟さんが安心できている様子が何か所も出てきます。

私もこの本を読んで改めて知ったのですが、うつ病と、うつ状態(抑うつ状態)とは異なるもので、うつ病は立派な脳の病気なのだそうです。だから、学九段は先崎先生によってすぐ強制的に入院させられます。そうしないと治らないのだそうです。うつ病は、死にたがる病気なので、精神科医とは、究極的に言うなら、患者を自殺させないためにいるのだ、という一文が印象的でした。

私はうつ病に関する本は多分ほとんど読んだことがなく、ただ細川豹々さんの『ツレがうつになりまして』とその続編(マンガです)だけ読みました。 
けれどこの『うつ病九段』は、うつ病の当事者が書かれている本なので、そういう本が出版されるのは初めてみたいです。 (ほかに出版されているのは、うつ病ではなく、抑うつの本のようです。)

私は先崎学九段の本を読んだのは、初めてですが、とても読みやすく面白く、正直です。あっという間に読んでしまいましたが、うつ病とはどういうものなのか、どういう症状が出るのか、どうやって治っていくものなのか、どういうことをするといいのか、逆に悪いのかが、よくわかりました。まるでうつ病についての教科書のようで、わかりやすく具体的な例を挙げながら説明されています。

私もコウジさんが倒れて2年くらいは、うつ病まではいかないまでも、「抑うつ状態」だったと思われるので、共感できること、同じ体験をしたことも出てきました。また、今は「抑うつ状態」ではありませんが(多分)、それでも共感することや、気づきがあり、心を非常に動かされました。

さらに、先崎学九段が中学時代イジメに遭いながらも、それに負けるものか、と努力をされてきたこと、いつも将棋に救われてきたこともわかりました。

どなたにも絶対役立つ、良い本だと思いますので、お勧めします。

・・・ 今夜、漫画家のさくらももこさんが亡くなられたニュースに驚きました。 まだ53歳だったそうです。 詳しいことはまだわかりませんが、乳がんだったとのこと。闘病中だったなんて、全然知りませんでした。 知っている人はいたのでしょうか。 ちびまるこちゃん役の声優、TARAKOさんですら、ご存知なかったそうです。

私と同じような年で、同じように絵を描く人(全然スケールは違いますが)で、私と同じように絵本作家のエロル・ル・カイン氏が好きたったことで、親近感を覚えていました。 その方が突然亡くなられたことが、今まですごく元気なイメージがあっただけに余計、ショックです。早すぎます。 

でも、私もそれならもういつ死んでもおかしくないなあ、という気が益々してきました。 
また書きかけのまま中断している「エンディング・ノート」を、書き始めなくちゃ、と思いました。

ご冥福をお祈りします。