高山から戻り、2日経ちました。
9月から断続的に15回続いていた講演が、高山講演で一段落し、途中体調崩したこともありましたが、無事講演先にご迷惑おかけすることなく終えることができ、ほっとしています。それでこの数日ぼ~っとしていました(もちろん、家事と犬散歩はやっていますが、これだけでいっぱいいっぱい。あとは、ぼ~)。

講演は、自分が行かないわけにはいかない(代わりがきかない)ので、当日体調が悪いことがないよう、やはりいつもカレンダーを見ながら緊張をしています。4月20日に毎日ホールで対談、5月12日に大船渡市で講演があるものの、8月の愛媛まではペースダウンするので、後回しにしていた用事にかかれます。

2年受けていない健診が気になっていたので、基本健診については近所で受けてきましたが、乳がん・子宮がん検診の区から送られてきた無料券がどこかへ行ってしまいました。探しても時間ばかり経つので、もう諦めてまた2年後になるかも。がっくり。(有料で受けてもいいのだけど・・・。)

さて、高山の話です。
高山市は岐阜県の北部にあり、東京から行くと名古屋経由で少々遠く、きっと講演のご依頼がなければ、もしかしたら行くことがなかったかもしれません。でも、帰ってきた今、コウジさんを連れてまた行きたい!と思う魅力的なところでした。講演後足を延ばして訪れた、白川郷にカルチャーショックを覚え、ゆっくり来たいと思いました。(その話も書きます。)

高山市は、面積ではなんと日本最大の市なのです。香川県より広く、東京都と同じくらいの広さがあります。
しかしその92.1パーセントを森林が占め、「山や川、渓谷、峠などが多く、標高差も2700メートルを超える」「北東部には槍ヶ岳、穂高連峰、乗鞍岳などの飛騨山脈(北アルプス)を擁し、高原川や宮川が北へ流れて神通川水系に、南部では御嶽山を擁し、飛騨川が北から南へ流れて木曽川水系に、南西部では庄川が南から北へ流れて庄川水系にそれぞれ流れ、その源流となって」いるそうです。(以上、高山市商工観光部観光課の「飛騨高山観光ガイドブック」より。)

私は講演日朝、品川から東海道新幹線に乗って約1時間半、「やれやれ、名古屋に着いた。」あと在来線特急「ワイドビューひだ」に乗り換えて高山へ向かいました。
車窓から外を見ていますと、トンネルを何度も通り、川(飛騨川)が近くへきたり離れたり、民家のそばを通ったり雑木林が続いたり、延々と3時間近く、そういう景色でした。

途中、下呂を通るとそこは少し賑やかで大きな建物もあり、降りる乗客も多かったものの、あとは山奥へ山奥へと向かうようで段々心細くなってきました(笑)。

ぽつりぽつりと立つ民家の1つを見て、(もし自分がここに住んでいて、そこで夫がくも膜下出血を起こして高次脳機能障害を負ったなら・・・)と想像しました。病院は?リハビリは?役所は?仕事場は?・・・ そして、『日々コウジ中』を出して下さった主婦の友社さんとの繋がりは?・・・

どうしただろうと思いました。
たまたま私は人口や病院、会社の多い東京に住んでいて、どこへ行くにも短時間で行ける便利さ、高次脳機能障害者家族も人口比でいえば3000人は区内にいると推計される世田谷区民です。
周りには精力的に活動される家族会が多く、声を上げやすく、繋がりやすく、弱者であるようでいて結構強者の部分もあります。

それでも、この14年半、特に最初の3年近くはものすごく大変だったのです。滅入って絶望し、自殺しそうでした。

もしこのような山奥に住んでいたら? どうしただろう。 もっと大変だった・・・はずです。
大丈夫ですか?不便なところに住まわれている高次脳機能障害者とそのご家族の皆さん、どこかと繋がっていますか?支援してくれる人はいますか?このブログ、ネットは使えていますか?

ここで、ここ数か月私が強く危惧を感じている話を書きます。
高山講演や国分寺市講演でも話しましたが、最近私にとっては考えを改めなくてはいけないショッキングな出来事がありました。

ある地方都市に住んでいらっしゃる高次脳機能障害当事者から、主婦の友社さん経由で2か月前にお手紙を頂いたのです。

彼女は20年近く前の若い頃交通事故を負い、以降、以前の自分と変わって仕事ができなくなり困っていました。でも高次脳機能障害という診断もなく、言葉すら知りませんでした。ほどなく結婚したご主人も困惑し、事故前の彼女を求め、家庭内がぎくしゃくしていました。
それでも子どもに恵まれ、なんとか実家の仕事を手伝っていた頃、お母様が新聞記事に気づいたそうです。それは高次脳機能障害について書かれたもので、お母様は「お前はこれではないかい?」と記事を彼女に見せたそうです。

彼女は(本当だ!私はここに書かれた症状にあてはまる!)と驚き、近所の町医者をその記事を手に受診。「先生、私はこれではないでしょうか?」と聞いたそうです。
ところがその医者は、「う~ん、そういう病名かもしれないね。」と言いつつ、ほかの病名を伝え、それきりだったそうです。彼女の住む地域には、高次脳機能障害支援をする機関もあり、講演会も開かれているのに、その情報も伝えられなかったそうです。

彼女はネット環境(ネットを使える環境)にいませんでした。
ご主人が、「お前にはスマホもパソコンも操作できない。」と言い、持たせてもらえなかったそうです。(このように、支えてくれるはずの家族や医者が、理解不足ゆえ邪魔をするケースもあります。)
彼女がその後なぜ『日々コウジ中』に辿り着いたのかはよく伺っていませんが、新聞記事にあったかご自分で図書館で見つけたかだと思います。そして私に手紙を寄越してくれたのでした。

私は彼女の電話番号を探し出して電話し、彼女の住んでいる地域の家族会代表に連絡しました。内容が切羽詰まっていたからです。
家族会代表は彼女に電話してくれたり関係資料を送ったり、彼女の地域の支援機関にも彼女を繋げてくれました。(そういう点でも、私は全国の家族会と繋がっている必要があります。相談をネットや手紙で受けた時、繋げることができるからです。でもまだ面識のない家族会にも、直接連絡してしまうこともあります。事態が緊急を要する場合が多いからです。)

この1件でハッとしたのは、日本中の高次脳機能障害者とご家族が、皆ネットに繋がっていると思ったら大間違いだということでした。それどころか、ネットを利用できている人こそ少数派で、もしかしたら平野部3割、山間部7割というこの日本において、ネットを使っていない人がほとんどだということもありえるのではないか?と。

私の本『日々コウジ中』もご存知ない方がほとんどで、ましてやこのブログを覗いてくれる方はものすごく少ないのでは?と。(それでも、1日1000~1500人(回)、多い時は2000を超えるくらいのアクセス数はありますが。コンスタントに更新していない時は、減りますけれど。すみません。)

講演会や勉強会に参加される方は、そういう方たちに比べればまだずっと情報が得られている方々です。当事者家族、支援者に繋がっていける力があります。でも、講演会や勉強会の存在自体も知らない、この障害のことすら知らない方がいっぱいいることがとても問題であり、それは高次脳機能障害に限った話ではなく、発達障害、難病の方々にとっても同じです。

ネットは万能ではない。
とすると、こういう障害や病気を周知させ、支援に結び付いてもらうには何が一番効果的か?と考えると、やっぱり「テレビや新聞」になると思うんです。

ネットはやらなくても、テレビはさすがに見ている人が多いですし、新聞も購読している人が多いでしょう。この2つの媒体にこそ、繰り返し繰り返し、高次脳機能障害(やほかのわかりづらい障害、病気)のことを載せてもらう必要があると思います。

なにかイベントや話題があるごとに、私達当事者・家族や支援者(行政・医療・福祉他機関)はテレビや新聞に取り上げてもらえるよう、ダメ元で働きかけましょう。働きかけて下さい。
やはりそれがこの障害を広め、支援を得、当事者と家族が元気に生きていけるための、最強、最短の方法だと思うのです。

つづく