今日は、ポレポレ東中野で上映されている、『東京干潟』を見てきました。
https://www.mmjp.or.jp/pole2/

いやあ、面白かったなあ!
日本の歴史や今の日本が抱えている問題がわかる、生き物への慈しみが描かれている、人と人、人と猫や鳥(動物)が支え合っていることがわかる、実に魅力的なホームレスさんが実直に懸命に生きていらっしゃるのがわかる、それらを包み込む監督の温かいまなざしが感じられる、そんな映画です。

この映画館は、いつも良質の映画を上映しているな、と思っていましたが、行ったのは今日が初めてです。東中野駅前にあります。

映画を見ての感想・・・といいますか、見ながら既に「知らなかった!」「すごい!」「ワクワクする!」「胸にくる!」と思っていました。だから終わってしまった時、「終わっちゃった。もっともっと見続けたかった。」と残念でした。しかし考えてみますと、架空の話を描くドラマは、ハッピーエンドなりの結論が一応あります。でもドキュメンタリーって、現実は進行形なのですから、終わりってないのですよね。だから、あのあとおじさんはどうしているのかな、干潟の工事はさらに進んでしまっているのだろうか、かわいい目をした鳶はどうしているのかな、なんて気になって気になって・・・干潟に様子を見に行こうかしら、とかまで思ってしまう。

なにを「知らなかった」かといいますと、多摩川河口にこんな干潟があること。しじみが採れ、しじみ狩りに来ている人たちが結構いること。東京オリンピックを控え、橋が架け替えられる大工事が進んでいること。そのために貴重な干潟が掘削され、大量のしじみも掘られた土と一緒に連れ去られていくこと(涙)。干潟の泥に足を取られ、身動きできなくなることもあること。こんな河口にホテルも建設されていること・・・などなど。

「すごい」のは、ホームレスのおじさんが、ちゃんと採るしじみの大きさを考えていること。あまり小さいのを取ると、育たなくてしじみがいなくなってしまうからだそう。大きなしじみは、「あとは卵を産んで死ぬだけだから。」なんだそうです。(え?しじみ(貝)は、卵を産むんだ!)、とそこにも驚く私でした。(生まれた時から貝かと思ってました。)

でもそのしじみも、小さなしじみも根こそぎ持って行ってしまう漁師の漁の仕方や、オリンピックのための工事によって、激減しているとのこと。おじさんの収入も激減してしまいます。ということは、おじさんが世話している猫も、お腹をすかせてしまいます。そしておじさんは、そのこと(猫がお腹をすかせていること)が狂ってしまうくらい嫌だそうです。

私はその気持ちがすごくわかるので、うんうん、とその場面で頷いていました。犬のウメ、猫のハルとチーがごはんを待ってみんなで私を見上げている時、(早くあげなくちゃ。)とすごく焦り、焦るあまり色々ミス(物につまづいて足の指を痛め、激痛で飛び上がったり、料理を焦がしたり)しますから。

おじさんの人生も描かれています。なんとおじさんは、大牟田の炭鉱の町生まれだそう。有明海の干潟で貝を掘ったこともあるので、その経験が今に生きているそう。父親は沖縄の有力者で、父を追って沖縄へ行き米軍基地の憲兵として働いた後、大阪で大手建設会社に勤務後独立。片目を怪我をして失明したけれど労災は申請せず(申請すると、次からその会社からは仕事がもらえなくなるからだそう)、でも目のこともあり仕事を辞め、今は猫15匹以上と河川敷で暮らし、「この暮らしが楽しい。」と言います。

もっとも、おじさんを頼りにしている猫達がいなければ、ここに居続けることはなかったようで、「こいつらがいるから仕方ないんだよ。」と諦め顔ながらも嬉しそうに、猫達をとても可愛がっているのがわかりました。過去には、目がまだ開かない子猫5匹が、捨てられていたこともあるそう。捨てる人間の無責任さに怒りながらも、「こいつらにも、生きる権利があるんだもの。」と甲斐甲斐しく世話をし、避妊手術もされる。おじさんには、猫世話するボランティアの人たちと交流があるようで、少し安心しました。

けれど自分が食べるものより、猫のエサを優先されていましたし、猫とおじさんの双方が相手を必要とし、頼り合っている姿が印象的でした。私もウメやハル、チーに助けられていますから、いたく共感しました。

この映画は、奥が深く、幅も広い優れた作品です。ドキュメンタリーだからこそ、今日本で起こっている様々な問題が説得力とともに、見る人に迫ってきます。見ながら、(やっぱり映画はドキュメンタリーだよね。嘘がない。真実しかない。)と思っていました。

・・・う~ん・・・私があれこれいくら細かく下手な説明をしましても、実際にご覧にならないと干潟の空気感、おじさんの魅力、自然破壊の脅威と不気味さ、猫のふわふわ感と鋭い眼差しと愛らしさ、台風の怖さ、その他もろもろは伝え切れません。やはり是非見に行かれて下さい。
それに、「おじさん」「おじさん」と書いていますが、驚くなかれ、お年は85歳だそうですよ。筋肉モリモリの屈強な体をされていて全然そう見えないので、「おじいさん」ではなく「おじさん」としました。

また、監督の村上さんがいいです。ホームレスのおじさんと同じ目線で考え、感じています。
しじみ採りのシーンなど、村上監督も同じような服装(調べると、ウェーダーというものらしいです)をしないと撮れないだろうなあ、と思って、映画のあと監督に聞きますと、やはりそうでした。
最初は、並行して撮影されていた『蟹の惑星』のために、カニばかり撮ってらしたそうですから、まさか自分がそんな恰好をすることになるとは、思わなかったでしょう。

蟹の映画と、しじみ採りのおじさんの映画をミックスして1つの映画にする予定だったものの、それぞれが余りにも広がりのある内容となったため、別個の映画として発表されたそうです。
そのエピソードを聞くだけでも、そんなに伝えたいことがそれぞれある映画なんだ、見てみたいな、と思いませんか?
私は今回『東京干潟』を見てきましたが、『蟹の惑星』も見たいと思っています。

映画館では、カニが脱皮したあとの皮も展示してありますよ。私はそれは蟹の標本かと思って見たのですが、皮だそうです。びっくりだなあ。たまたま今日も脱皮したばかりの蟹がいて(蟹は何匹か展示されています)、村上さんは興奮して「ほらほら、見て見て、脱皮したばかりですよ。」とその蟹と皮を指さしていました。なんだか子どものような村上監督が微笑ましく(失礼)、生き物大好きな私はとても共感したのでした。

帰宅してコウジさんにパンフレットを見せながら、映画の説明をしますと、「あ~あ、行きたかったな。」と口を尖らせます。大丈夫、上映期間が好評につき8月23日まで延長となりましたので、今度こそコウジさんを連れて行ってきましょう。
ちょうどお子さんたちも夏休みですから、自由研究のアイデアをもらえるかも? 

また、アンコール上映(上映延長)の決定を受け、ポレポレ東中野では、村上浩康監督特集上映も開催することになったそうです。(『流 ながれ』、『無名碑 MONUMENT』、『小さな学校』)
詳しい上映スケジュールは、冒頭のHPをご覧下さい。

ということで、最後は映画看板前の村上監督です。素敵な笑顔がいいですね!

IMG_2603


劇場で売っていた村上監督の別の映画、『流 ながれ』のDVDも買ってきました。
DVDの売上などは、なんと映画に出てきたおじさんの猫のエサ代としてカンパになるそうです。
嬉しいですね!有難うございます!皆さんも、どうぞご協力ください。

温かな心の村上さんの、すっかりファンになりました。